第24章 鋼牙の本能
わぁぁぁぁぁ…!!
がきぃぃぃん!!ざしゅっ…!
「攻めろぉぉぉ!!!!前へ進めぇぇぇ!!!!」
「下がるなぁぁぁ!!抑えこめぇぇぇぇ!!!!」
外で怒声の嵐が響き始めた。…戦がついに始まった。手はず通りに、あの二人が前線を上げていき、私達は奇襲と防衛に備える。私は城に残り、運ばれて来る患者の治療に追われていた。
「お姉様、こちらの方は如何しましょうか?」
「…腕は、切り傷だけれど浅い…。消毒したあとにそこの塗り薬を塗って。でも、右足は骨折してるわね。患部を板で固定して、包帯を巻いて。」
「はいっ…!」
冬はとても優秀で私の指示どおりに動いてくれて、私が動けないときも、他の方に的確な指示を出してくれるので助かる。本当に良くできたいい子だ。それにしても、怪我人がひっきりなしに来るのでとても休んでいる暇はない、政宗さんと家康さんは大丈夫だろうか?つっこみすぎないといいが…。そんなときに伝令役の方が此方に駆け込んできた。
「伝令です!…政宗様、家康様率いる織田軍は敵を本拠地まで抑え込むことに成功したそうです!」
それを聞いて、休んでいた人達が大層喜ぶ。冬も嬉しそうにしているが、私は納得がいかなかった。私の考え込む仕草に気付いた冬が心配そうに駆け寄ってくる。
「…お姉様、如何なされましたか?何か、心配事でも…。」
「…おかしいわね。」
私の言葉に首を傾ける冬。
「…おかしいとは?何がおかしいのですか、お姉様?」
「…いくら何でも敵陣の本拠地に乗り込めるなんて、まだ早すぎる。仮に、政宗さんが絶好調だったとしても、もう数日は掛かるはずだった。家康さんが同行した訳だから抑止力はあったはず…。何か嫌な予感がするわ…。」
私が頭を悩ませているのを冬が心配そうにしていると、新たに伝令の人が駆け込んできた。
「伝令っ!伝令っ!後方より敵軍およそ三万がこちらに向かって進軍しているとの事です!!」
「「「「…っ!!」」」」
場に緊張がはしった。…まずい、此処には負傷者が多過ぎる。それにこの城にいるのは、約一万人。どう考えても分が悪い。家康さんが気づいてくれると良いけれど、戻るのにも時間が掛かる。…これが狙いだったか…っ!
「…お姉様っ!」
冬が私の方を焦った顔をして向いた。
「っ…至急連絡をっ!前衛の織田軍に戻ってくるようにと!」
私は、叫んだ。