第22章 和解と始動
「…そうですね、変な人たちばかりです。勿論あなたもですよ。しのぶ様。」
彼女はそう言ったかと思うと私の方を見た。
「…えっ。私もですか?」
「はい、あなたは戦った相手をこうして寝所に招いているのですから。随分と変な人です。」
「…そうですか。多分、あなたが私に似ていると思ってしまったからかもしれません。」
そう言うと、彼女は不思議そうに首を傾けた。
「…それはどういう…。」
「冬さん、あなたはこの戦で死のうとしてますよね?」
「…っ!」
私の言葉が図星だったみたいで彼女は怯んだ。
「なぜ、そう思うのですか…?」
「あなたの目が私とそっくりだからです。…嘗ての私と同じ、戦いの後のことを考えていない目です。」
「……。」
彼女は黙り込んで下を向くと、ボソリと呟いた。
「…そのとおりです。私は奴さえ倒せればそれでいい。何せ、私の家族はもう何処にも居ないのですから。それに、私の一族は皆、金髪なんです。…それなのに私は銀髪だった。力だって彼らの半分位です。…私は落ちこぼれなんです。そんな私に生きる価値なんてない。」
彼女の瞳が次第に曇っていく。それは、全てを諦めた顔だった。
「…あなたの家族の願いを踏みにじってまでもそれを望むのですか?」
「…もう、分からないんです。なぜ、あの時父の言葉に歯向かって、側で死ねなかったのか。私の選択が正しかったのかよく考えてしまうんです。…どうして、私だけ生き残ってしまったのでしょうか。なぜ、父が身代わりになって死ななければいけなかったのでしょうか。…ごめんなさい、出過ぎたことを言いました、忘れてください。」
彼女は無意識に出ていた涙を拭い、天幕から出ようとした。そんな彼女に何を思ったのか私は引き止めて話しだした。
「…私もあなたと同じですよ。私には刀を振るう才能がありませんでしたから。姉でさえ、諦めろと言ってきた始末です。師匠にも無駄死にをする気かと何度も怒られました。…それに、私にとっては姉の正しさは毒でした。近づこうとする度に遠ざかる背中に私は歯を食いしばりましたから。でも、そこで諦めたくなかったんです。才能が無いとかそんな理由で全てを諦めなければいけないなんておかしいじゃないですか。何かを成すのに大層な理由なんて入りません。…必要なことはやろうとするかしないかです。」