第22章 和解と始動
冬さんが去ったあと、私達は静かに話し出した。
「ちょっと、冬さんがしょんぼりしてしまったではありませんか。」
「俺のせいかよっ。…でも、俺はあいつを褒めただけだぜ?悪気は全くねぇ。」
「あったら困ります!」
私は政宗さんとヒソヒソと言い争っていると、家康さんが鬱陶しそうな顔をして話しだした。
「…俺の前で、喧嘩しないで。あと、政宗さんはいい加減、七味唐辛子返して。」
「ん?ああ、此れか!…いいや、返さねぇ。ちゃんと味わって食え!」
「…はぁ?何それ。食事にとやかく言われる筋合いは無いんだけど?」
「…言っとくが、俺が作ったやつだからな!」
「食べるときは自由でいいじゃん!」
こっちも喧嘩が始まっているのだがと言いたいところだが、兵の方々が心配した様子で此方を伺っている。流石にまずいと思い、何とか仲裁案を出して二人を落ち着かせて、冬さんについても少しだけ謎が深まった夜だった。
「…ひどい一日でしたよ、全く。」
私は自分の天幕で溜息をついていると、外から失礼しますと声がした。
「はい、どうぞ。」
バサッ…
中に入ってきたのは、外で見回りをしていた冬さんだった。私はどうしたのかと思い、聞いてみようとすると彼女は中々変わらない表情筋が少しだけ動き、申し訳なさそうな顔をした。
「…すみません。私があの時変な顔をしたばっかりにあのような事に。…大変ご迷惑をお掛けしました。」
まるで土下座をするかのように綺麗に謝る冬さんに私は呆気にとられてしまったが、意識を取り戻し彼女に向かって微笑んだ。
「別にそんなに気になさらなくても大丈夫ですよ。人には誰にだって触れてほしくない部分がありますから。…政宗さんはあとでこってり絞っておきますから。」
私が笑顔で言い放つと彼女は少しだけ困った様な顔になった。
「…ほどほどにして下さい。あの人はきっといい人だと思いますから。」
そう言うと、彼女は何処か遠くを見るような、何か眩しいものを見るような目でこちらを見た。
「…冬さん、自分をあまり蔑まないであげて下さい。迷惑を掛けない事も大切ですが、あなたがそれに疲れてしまっては駄目ですよ。大丈夫です、この問題は必ず私達が解決しますから。何せ、安土の武将は曲者揃いですから。」
そう言うと彼女は少しだけ目を見開いたあと、口角が上げて、目元を柔らかくした。