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戦乱の蝶姫

第22章  和解と始動


「じゃあ、頼むわ。しのぶ、家康ー!こいつ借りてくぞ!」

政宗さんが遠くにいる家康さんにも聞こえる大きな声で叫んだ。それを近くで聞いている私は耳が痛いが、どうやら家康さんには聞こえたらしく、とても嫌そうな顔をして振り返ったかと思うと直ぐに前を向いて歩いて行ってしまった。

「…あれって、大丈夫なんですか?」

「おう、あいつはいつもあんな顔してるからな。大抵は大丈夫だ!」

その顔の原因はほぼほぼ政宗さんで確定だと思う。私は心の中で溜息を付きながらも、政宗さんがついているから大丈夫だと思いその場をあとにした。



「…凄く、美味しいですね。」

「…そう?辛さが足りないと思うけれど。」

そう言うと、家康さんは小瓶に七味唐辛子を入れたものを取り出して料理に振りかけ始めた。私がギョッとして見ていると、誰かがすごい勢いで家康さんの小瓶を取り上げた。

「お前なぁ…!いつも言ってんじゃねぇーか!!食事の原型を消すほどに唐辛子を入れんじゃねぇーって!」

それはめちゃくちゃ怒っている政宗さんだった。私は彼を宥めなければいけないと思い、話の転換をしようと考えた。

「…そういえば、政宗さん。冬さんはどうでしたか?炊き出し、一緒にやったんでしょう?」

そう言うと、政宗さんは嬉しそうに話しだした。

「そうなんだよ!あいつ、料理にめっちゃ詳しいぜ!何せこの俺と語り合えるほどだからな!あいつが助言してくれたお陰でこの料理ができたんだ。」

とても楽しそうに話す彼を見て何とか怒りの矛先を治めたと思いホッとしていると。背後からの人影が地面に映った。

「…お味は如何でしょうか?お口に合いましたか?」

少しだけ心配そうに顔を歪めながら話す冬さんに私は満面の笑みを浮かべた。

「ええ、とっても美味しいです。…ご自分で料理をされていたのですか?」

私が聞くと彼女は少しだけ柔らかい顔になり、話し始めた。

「…里にいた頃は私が家族の料理を作っていました。特に、父と母は仕事が忙しかったので料理を作る暇が無かったんです。そのため、自然と覚えました。」

少しだけ、懐かしそうな顔をする彼女に更に話しかけようとすると遮られてしまった。

「すげぇな、お前!料理の才能あるよ!」

政宗さんが冬さんを見て嬉しそうに話した。彼女は目をぱちくりさせたあと、少しだけ悲しそうな顔をして去ってしまった。
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