第22章 和解と始動
「…そうか?そりゃあいつもご苦労なこった。」
政宗さんはニコニコしながら彼に言葉を返した。それを見ていた家康さんは呆れた顔をして応えた。
「だったらもう少し大人しくしててよ。…毎回敵陣に突っ込むの止めてくれません?」
家康さんは嫌味を言ったようだったが、政宗さんには全く通用しなかった。
「それはできねぇ、相談だな。」
「…はぁ、どうせそう言うと思ってましたけど。」
私は苦笑いで二人の会話を聞いていた。因みに冬さんも馬に乗って一緒に来ている。私は漸く独りで乗る許可が出たので、今日は独りで馬に乗っている。
「…そういや、冬。お前どのくらい戦えるんだ?」
「…はい?」
突然の政宗さんの質問に疑問を抱いている冬さんの応え。
「いや、鋼牙って言ってもよ。俺らは実際に戦ってるところなんて見たことねぇー訳だ。なぁ、家康?」
「…さっきから、俺にいちいち振らないでくれません?」
「いいから、答えろって。」
「…まあ、俺も聞いただけですから。」
なるほど、二人の会話を聞いている限り、彼女の実力を疑っている訳だ。確かに見た目の良いだけの少女に見えるかもしれない。私がどうしようかと悩んでいたとき、意外にも発言したのは冬さんだった。
「じゃあ、もし盗賊が出てきたら、私一人で戦います。奇襲されたときも同じような感じで。それでいいですか?」
彼女はさも当たり前であるかのように話しだした。それを聞いて二人とも少しだけ驚いた様子だが、様子見ということで承諾してくれた。
そんな事を話しながら辺りは暮れていき、すっかり夜になった。私達はそこで野宿をする事になった。兵の方々もずっと移動してばかりだったので流石に無理があるということを話し合った。私が兵の方々と天幕を張っている最中にそれは起こった。
「…おいおい、此処は俺らの縄張りだぜぇ?金目のもんと女だけは置いていきな。」
ガラの悪い連中が百人近くやって来た。おそらく夜だから、奇襲できると思ったのだろう。私はニコッと笑いながら彼らに向かって歩き始め、猛毒を撃ち込んでやろうと刀を抜こうとした。それを誰かに肩を掴まれて止められた。
「此処はさっきの約束が有効なんじゃねぇの?なぁ、冬。」
政宗さんが肩を掴みちらっと背後に佇んでいた冬さんを見つめた。
「ええ、問題ないです。お任せを。」
暗闇の中、少女は鎖を鳴らした。