第22章 和解と始動
「…正直に言うといい加減休みたいくらいですよ。休暇って出るんでしょうかね?」
私が困ったように笑うと、彼は此方を見て溜息をついたかと思うと立ち上がって何かを探し始めた。ゴソゴソと探しており邪魔できないと思いながらもやはり気になってしまう。話しかけようとした時、彼があったと言ったので何事だろうと思った。
「…家康さん?何があったのですか?」
「此れ、疲れに効く薬草の調合した物。…これ煎じるから、少し休んで。」
彼はずいっと薬を手に乗せられた薬を私に見せて、私に仕事の中断を促した。
「…えっ、でもそれでは、家康さんの負担になってしまうのでは…。」
「別に、一つも二つも同じだから気にしなくていい。…それよりちゃんと体調を万全にして。あんたがそんな調子だと、陽が騒ぐだろうし。」
「…なるほど。簡単に想像できてしまうのが恐ろしいです。」
私は脳裏に、先日陽に叱られたときのことを思い出し青ざめた。
「……それに、あんたがそんなだと、俺の調子が狂う。」
そう言うと私への薬草の煎じ薬を作り始めた彼。…やっぱりよく見ると照れていることが分かる。下を向いていても、耳が赤くなっているのでバレバレですよ。私は微笑ましくて、ニコニコと家康さんを見つめていた。
「…もしかして、照れてます?」
「…照れてない。」
「…本当ですか?」
「…しつこい、いいから休んでなよ。」
私は彼のちょっとした気遣いに感心しながらも、彼の言うとおりにしないと睨まれるので、彼が煎じ薬を作るのを見ていた。…本当にお人好しばっかりだ、安土城の人達は。
「…ありがとうございます、家康さん。」
私は心からのお礼を彼に言いながら、微笑んだ。
「…俺の自己満足だから、お礼はいらない。」
「あら、そうですか。」
「…でも、今度は周りを頼れ。独りで何でも解決しようとすんな。」
彼は少し怒ったような顔でありながら、その雰囲気は私を心配しているものだった。私は、その顔が少しむず痒くなり目を反らした。
「…返事は?」
「ええ…それ返事を必要としていたんですか?」
「…当たり前でしょ?約束して。」
私は彼の真剣な眼差しに少したじろいでしまった。いつも、先に明後日の方向を向くのはそちらなのに何だか負けた気分だ。
「…前処します。」
それを聞くと彼は溜息をついたあと、呆れた顔をした。