第21章 情報の開示
私の視線には、私達の近くで横たわっている随分と干からびた母の亡骸がありました。私は泣きながら父を見ました。すると父は笑って話しだしました。
『すまねぇ…お前…を…独…りにし…ちまっ…て。でも…お前…だけは…生…き残って…くれ。随分先…に…逝っちま…った、母さん…の為にも。…最後く…らいは彼奴…に、会いた…かったな…。あの…馬鹿…息子…。』
そう言うと、父は息絶えて握っていた手を離しました。私は父の亡骸を抱きながら泣き崩れました。
『ゔぁぁぁぁぁ…!!!』
ですがずっと泣いていることも出来ず、私は父との約束を守り、あの里を出ました。そうして傷だらけになりながら幾日も歩き続けているととても美味しそうな匂いに惹かれました。甘辛い匂いにつられてふらりと歩いていくと、ある女性と出会いました。…それが、今の女将さんです。あの人は傷だらけの私を親父さんに紹介して、私を介抱してくれて温かい食事と暖かい寝床を与えてくれました。私は二人の優しさに大泣きしてしまい、何も聞かずに置いてくれることに感謝をしていました。ですが、働かざる者食うべからずというように私も働かさせて欲しいと言い、承諾を受けて働いていました。数日の間は二人に恩返しがしたくて一生懸命働いていました。ですが、其処に現れたのです、あの男が。
『…よう、久しぶりだなぁ。鋼牙は全滅したと思ったんだがなぁ?』
聞くのも悍しく感じるような声に振り向くと、あの男が店の前にやって来ていました。私は息が止まりそうになり、その男を殺そうと殴りかかろうとしました。
『おっと、おっかねぇ…。力で何でも解決すると思ったら大間違いだぜ?』
『…っち。何故、此処に来たんですか!!』
『おぉ…こぇぇ…!まあ、依頼をしようと思ってなあぁ。』
『はぁ…?誰があなたの依頼なん…』
『いいのか?…もし断れば、店の周りにいる俺の仲間がこの店の奴らを皆殺しにするぜ?』
『…なっ。貴様ぁぁ…!!』
『大事なんだろぉ?ここの奴らを守りきれると言えるのか?…まだ、【獣化】が出来ないんだろ?』
男は私を挑発するように此方に視線を向けてきました。私はそれが許せなくて今にも掴みかかって殴り殺してしまいそうな感情を抑え込み、二人の安全を最優先に考えました。二人は今、台所にいるのでどっち道、危険は避けたかったのです。
『…要件を言ってください。』