第21章 情報の開示
男は私達に罵倒を浴びせてきました。それは聞くに耐えないものばかりでした。私は段々とイライラして男を殺したくなりしたが、里の長に止められて手が出せずにいました。そんな中で男が気になる言葉を残したのです。
『…この、野蛮族が!魔王や大名に魂を売り渡した愚か者共!お前達の選択がこのあとの災いを引き起こすのだ!覚悟しておけ!!!』
男はそう叫んだあとに激昂しながら、里を出ていきました。私はこの最後の言葉を考えながらもいずれ忘れてしまうだろうと思い、気にしませんでした。…その数日後でした。地獄のように燃え上がる炎が里を襲い、今まで尽くして来た大名達の兵に同胞たちが殺されたのは。私は、燃え上がる世界で必死に戦い続けながらも、余りにも多すぎる人数に勝てずもう死ぬのだと思いました。…そんな時に私と一緒に戦っていた父が私に言いました。
ゴォォォォオ…
『…何で、こんなことに!!…くっ!』
『っ…冬!!危ない!!』
『えっ…?』
私は背後の兵が刀を振り上げるのに気づくのが遅く、もう斬られると心の中で思いました。ですが、私は無傷でした。……それは、父が身を呈して私を庇ってくれたからです。突然の事に理解が追いつけず、私は父の血飛沫が上がるのを呆然と見ていました。
『…父さ…』
『…ぐっ!!』
『…しねぇぇぇえ!!』
『…オラァァァァ!!!』
グシャァァァ!!
父は力を振り絞るように斬ってきた男の顔面に向かって鉄球を振り上げました。男の顔は潰れドシャリと崩れ落ちながら倒れるように息絶えました。ですが、父の背中傷は思ったよりとても深く、血は止まることなく止めどなく流れていきました。
『…お父さん!お父さん!!しっかりして!!!』
『…ゲホッ……。無事…か、…ふ…ゆ?』
『うん、平気だから…。大丈夫だから…早く、止血を…!』
『…もう…いい。…止め…ろ、冬。』
父が、私の手を掴みそう言いましました。
『な、何言って…!!』
『ふ、ゆ…よく…き…け。…ここ…から…に…げろっ。』
『はぁ?!何言って…。何言ってるの?!』
『…この…傷じゃ…あ…俺は…もう…無理…だ…。さっき…から、体…がうご…かねぇ…。…この…里はおそ…らく…滅…ぶ…そうな…るま…えに、逃げろっ!!』
『…そんな、お母さんだってもう何処にも居ないのに…。ここを離れられる訳がない!!』