第21章 情報の開示
「…ほう、では申してみよ。そなたの知る秋雨という男について。」
信長様が愉快そうに口角を上げて、少女に話す様に促した。少女は一息ついて話しだした。
「…はい、事の発端は約一ヶ月前に鋼牙の里に来訪者が来たことから始まりました。」
私の故郷である鋼牙の里には武に秀でた者が数多く存在していました。戦に駆り出される者が数多くいて、大名や偉い方に仕えるというより、依頼されて戦に馳せ参じるという事をして生活をしていました。勿論、戦だけではなく護衛や野盗の処理なども依頼されていました。特に、大名の方々は戦後の支払額が大きいので生活を維持する為に依頼を受けていたと言っても過言ではありません。そんな中で私も依頼を受けながら少しでも家系の足しになればと戦い続けていました。何せ、大黒柱の兄が突如として行方不明になってしまったのですから。そんな時にあの男、秋雨が現れたのです。男は、里の者に案内され里の長の下に連れて行かれました。
『…突然、訪ねてしまい申し訳ない。私は秋雨と申すものです。依頼してもよろしいでしょうか?』
『構いませんが、どういった内容で?』
『……ある男の暗殺を依頼したい。』
その言葉を聞いて、その場に居た私達は戦慄しました。何せ、表立って戦いに挑むのが私達の流儀。彼の依頼は私達の誇りに反するものでした。
『大変申し訳ないが、その依頼はお引き受け出来ない。…帰って頂こう。』
里の長は男に帰るように促しましたが、男は途端に立ち上がって激昂しました。
『ふざけるな!ここまで来るのにどれだけの時間を掛けたと思っている!…あの、魔王の暗殺をどうか引き受けてくれ!!』
『…魔王?』
『ああ、魔王…織田信長だ。』
『……?!?!』
その言葉は私達を驚かせるには余りにも十分すぎました。その時の困惑と呆れた感情は今でも覚えています。何せ、目の前の男は尾張の大名を殺せと言うのですから。…皆、頭がおかしくなったような男を不審な目で見つめていました。それは里の長も例外ではありませんでした。
『お引き取り頂こう、話にならない。…外にお連れしろ。』
ガタッ!!
『…なっ、なんだと!…おい、何をする!離せ!!!』
男は座っていた椅子が倒れるほど勢いよく立ち上がり、里の長に殴りかかろうとしましたが後ろで控えていた何人が男を捕らえ外に出そうとしました。