第21章 情報の開示
それを聞くと少女は目を見開いて、驚いていた。勿論私も言葉が出ない状況である。私達二人は、ポカーンとした顔をしていたに違いない。そんな中、秀吉さんは続けた。
「…俺はお館様を害するものは断じて許さない。それが女や子供であってもだ。…だが、お前は信長様の籠姫であるしのぶに待てと言わせたんだ。それだけの価値があるなら俺はそちらを優先する。」
とても怖い顔をしながら、真っ直ぐに少女から視線を離さない彼。私はそんな彼を見て、だからあの時安心できると考えたのだと思った。
「…おかしな方々ですね、本当に。」
少女は視線を下に向けながら、ボソリと呟く。
「…でしょう、私も初めて会ったときはそう思いましたから。」
私は彼女に微笑みながら話し出す。少女はそれを見て、少しだけ口角を上げたかと思うと、即座に信長様の方を向き、土下座をした。…えっ?
「…度々の失礼な態度、誠に申し訳御座いません。失礼ながら、皆様を試させていただきました。…私共の事件を解決してくださる方かどうか。」
「…試すだと?…どういう事だ。」
信長様が怪訝そう土下座している彼女を見つめる。彼女は頭を上げ信長様を見つめたかと思うと話しだした。
「…はい、今回の事件。私の手に余ります。どうかお助けください、安土の皆様。」
「貴様は今回の件について何かを知っているのか?」
「はい、皆様がお聞きになっている、秋雨という男についても。…私が彼について知っていることを全てお話いたします。」
それを聞いて、皆さんがとても驚く。対して、信長様はニヤリと笑って、話しだした。
「条件は何だ?…まさか、ただで情報を教える訳ではなかろう?」
「…頭が回りますね。流石は天下の織田信長様です。…私の条件はこの件の解決に私も加えて欲しいこと、ただそれだけです。」
「…ほう、貴様存外、正義感が強いのか?見くびっておったわ。」
「…正義感ではありません。あの男は私の獲物です。」
少女はそう言うと、目つきが鋭くなった。それを見ていた、政宗さんがからかう様に言った。
「…へぇ、獲物ねぇ…。まるで獣みたいだな、お前。」
「そう見えるのは仕方がないと思います。。…だって私は鋼牙ですから。」
ずっと無表情だった少女が初めて顔を崩して不敵に笑った。その微笑みは悪戯が思いついた少年の様で当たり前の事を言う様に何処か冷めていた。