第21章 情報の開示
「…しのぶの時はお館様を助けてもらったので疑いきれませんでした。ですが、この者は最初からお館様に攻撃しました。…今すぐ、殺すべきです。」
秀吉さんが鋭い目で少女を見つめながら自身の刀に手をかけた。他の皆さんも意見は一致のようで、全く動いていないのは、信長様、光秀さん、そして私だ。
「…待って下さい。彼女に聞きたいことがあります。」
私は背筋が凍るような状況で手を挙げて、発言した。
皆さんの視線が一斉に此方に向くので少し辛い。
「…はい、答えられる範囲でどうぞ。」
「分かりました。…あなたは私達を殺すつもりは無かった、違いますか?」
私のこの質問に一番驚いたのは秀吉さんだった。
「…はぁ?しのぶ、お前何を言っているのか分かっているのか?お前が一番戦っていただろうに。」
彼が心底不思議そうな顔で私を見てきた。少女の方を見ると、目を開けたり閉じたりして、パチパチと効果音が付きそうだ。…此れも、驚いているのでしょうけれど、何か変です。誰かを思い出します。
「…どうして、そう思うんですか?私はあなたに、攻撃を仕掛けたのに。」
少女は不思議そうな顔をしてこちらを見てきた。私はニッコリと笑って彼女に返した。
「ふふっ…戦っていると分かるんですよ。相手が何を考えているかとか、色々。…皆さん、信じられないかもしれませんけれど私が今ここで五体満足でいることが何よりの証拠だと思いません?…何せ、あの鋼牙を前にして、誰一人欠けることが無かったんですから。それに、私は力のある相手が一番苦手なんです。そもそも、勝てる訳が無いんですよ。特に、無傷でなんて。」
私の言葉を聞いて皆さんが、ハッとした顔をする。そんな中、信長様は愉快そうに口元を上げた。
「…なるほどな。確かに、一利ある。異論はあるか猿?」
「…………………………いえ、申し訳ありません、お館様。」
信長様はチラリと秀吉さんを見た。秀吉さんはブツブツと何かを呟いて、ため息を付くとそう言って、どっかりと席に、戻った。それを見た人達もため息を付きながらも、席に、戻って行った。それを見ていた少女は目をぱちくりさせて聞いてきた。
「…信じるのですか?」
「いや、お前の事は全く。」
秀吉さんが即答する。それを隣で三成君が宥めている。
「お前の事は信じていない、でもしのぶが言っているからな。だから、刀を収めた。」