第1章 ~始まり~
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己早を警邏に引き渡し、ようやくひと段落がついて私は肩をなでおろした。
こんな時間になっちゃったから早く帰らないと玲葉さんに心配かけちゃう。
すっかり暗い空を見上げているとふとゼンが思い出したように話し始めた。
「そういえば、白雪の友人だっていう人が白雪のことすごく心配してたぞ。帰ってこないって青ざめて話しかけてきたんだ」
「!もしかして玲葉さん?やっぱりすごく心配かけちゃったんだ。あのね...玲葉さんにもゼンのこと紹介したいって思ってたんだ。とっても優しくて勝手にお姉さんができたみたいだって思ってるの」
「白雪がそんなにいう人ならもっと話してみたいな。あの時は急いでろくな話ができなかったから」
白雪がはやく友達のことを紹介したいと笑う様子にゼンはほっとして目を細める。
「どこで知り合ったんだ?あの女性、白雪より年上だよな?」
「確か私より四つ上だったはず。玲葉さんと会ったのは本当につい最近なんだ。薬屋に薬草を見に行った時、薬草を受け取りにきていた玲葉さんに会ったの。私よりも薬草に詳しくて、宮廷薬剤師を目指していることも聞いたの」
「宮廷薬剤師ってうちの城のか?」
玲葉さんとは同じ宮廷薬剤師を目指してる仲間だって気づいてからは一気に打ち解けたと思う。玲葉さんは私の知らない薬草のことを知っていて、お互いにわからないことを質問して解決できたのだ。
「うん。でもまさか…隣に部屋に住んでいる人だとは思わなったよ」
あの時は本当に驚いた。朝起きて顔を洗いに行こうとしたら隣の部屋から玲葉さんが出てきたから。
玲葉さんも私が隣の部屋の人だとは思わなかったみたいでしばらくお互いに固まってしまい、おばさんの声で同時に我に返ることができたので顔を見合わせてどこからともなく互いに笑い始めてしまったのはいうまでもない。
「なるほど薬学仲間ということか。じゃあ、早めに帰らないとな」
「うん。これ以上心配かけるわけにはいかないから」