第3章 〜ラクスド砦〜
「砦で原因不明の体調不良者が出ている。二人にはその原因の究明と治療をお願いしたい」
「えっ!わ、わかりました、行きましょう。玲葉さん」
「了解です。白雪はそのままミツヒデさんの馬に乗って先に行って、私は馬を取りに戻って追うから」
街の入り口に向かっている途中だったから馬を預けた場所はそう遠くはない。すぐに追いつけるだろう。
白雪に薬草の入った鞄を預けて馬を取り行き、サッとまたがり馬のいななきとともに走りだした。
こういう時練習していてよかったなぁと思う。ラクスド砦は街からそう遠くにない。すぐに見つけることはできた。
って……この静けさ、嫌な感じだ。
「ゼン殿下、ミツヒデさん。白雪は中に?」
「あぁ。すぐに状況を説明する」
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二人から聞いた話によると原因不明の体調不良者が続出しているそうだ。それのせいで治療士も伝令役も倒れたのだそう。
しかも、その間に入られたのか武器庫は空だったと。
「…盗賊の仕業でしょうか」
「オビみたいなこと言うな……」
「アイツみたいとは心外です。でも、状況を聞く限りはその体調不良、人為的に起こされた可能性が高そうですね。すぐに白雪と共に調べさせてもらいます」
どういうことだと聞かれる前にさっさと門をくぐった。やっぱりあのオビってやつ、ここに来てるんだ。ちょっと嫌かも。
中に入って暖炉の近くで兵士たちを看病しながら書き物をしている白雪を見つけた。それにしてもこの部屋、窓から離れてる部屋だから換気が難しい位置にある部屋か。
これじゃ、もし感染症だったときや有害なものが空気中に舞っているものだったらすぐに体調も悪くなりそうだ。
床に眠る兵士たちは入り口に近い方は談笑するレベルでよくなっている。
「白雪。兵士たちに薬を飲ませた?」
「あ、玲葉さん。そうだんです、治療師の方が用意した薬草をお借りして調合したものを使いました。こちらがカルテです」
「…やっぱりここの薬草は量が必要だから。この分だと明日、街で買いに行かないといけないね。白雪、この薬草は王宮から持ってきたものがあるからこれを使ってみて。
兵たちは私が見ておくから白雪はそこの椅子に座って一回休憩」
強引にでも患者から引き離さないとこの子は倒れるまで体が疲れ切っていることに気づけないくらいの我慢強い子なんだから。