第1章 ~始まり~
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部屋にいても落ち着かないから外で白雪の無事を祈りながら待っていると馬の走る音が微かに聞こえ、顔を上げた。
「玲葉さん!」
「白雪、よかった……」
赤髪が揺れるのが見えて、安心した。ぱっと見た感じ大きな怪我もしてなさそうだ。
白雪の後ろから白雪の友人だという男が見えて、白雪を連れてくるって約束をしっかり守ってくれたことを知った。
白雪を優しく抱きしめるとしばらく白雪は慌てて出ようとするが、腕の力を強めると大人しくとど持ってくれた。
「本当に無事でよかった……昨日の夜にあなたの部屋に行って誰もいなかったとき、すごく恐ろしかったんだから」
「ごめんなさい…玲葉さん。もしかしてずっと外で待っていてくれたんですか?」
夜風で完全に冷え切った体で抱きしめたからわかったのだろう。怖い目にあったのは白雪のほうだろうに。
僅かに目元が赤い白雪を見て、苦笑した。
「当たり前だよ。白雪は私の友達なんだから。…それで急いでたから聞くの忘れたけどあの人も白雪の友人だっけ」
「あ、うん。ゼンっていうんだけど」
白雪はどう伝えようか悩んでいるのを見て、納得した。上質な布で作られた服を見て、上流階級の貴族の息子かなって何となく思っていたけど。違ったな。
「いいよ、白雪。もう夜遅いから今日のところはここで解散にしよう。ゼンさん?」
「なんだ?」
「貴方もそろそろ帰ったほうがいいですよ。護衛の方がきっと心配しているでしょう。次は城でお会いしましょうね」
これ以上何も言うなという念をこめて言うと戸惑いながらも頷いたのが見えて、ふっと笑うと部屋へと戻った。
背後にはゼンが第二王子だとばれたのかと首を傾げる二人が残されたのだった。
「まさか第二王子が白雪と友人だなんて思わなかったなぁ。白雪はそういう不思議な縁でも持っているのかな」
宮廷薬剤師になるのは自分の知識を生かしてどこまでやれるか挑戦したかっただけなのと自分の目的を果たせそうだからというだけだったのになんだか面白いことになりそうだ。