第1章 ~始まり~
「あの!白雪の友達ですか?!」
「あ、あぁ。君は?」
「私は白雪の友人の玲葉です。し、白雪を知りませんか?!昨日、暗くなる前には帰ると聞いたのにあれから帰ってきていないんです!」
「!!なんだって?!」
顔を青くさせ、表情を引きつらせた彼にこんな状況だが、ほっとした。
この人は普通の貴族と違う。
あの子を本当に友人として見てくれている子だ。信じてもいい人だと本能的にわかった。そらすことなく真っすぐとこちらを見る宝石のような青の瞳や服装からかなりの上流階級の人だと思ったのに。なんだか不思議だ。
この人が白雪の友達なんだ....
私の知ってる貴族の男は父親の権力で自分の言い分を絶対に通すようなやつだったからどうも珍しく感じる。
「貴方が誰なのかは知りませんが、白雪のことを心配しているのが伝わりました。
私は貴族は苦手だけど、あなたのことは信じます。どうか白雪を連れてきてください」
「!!あぁ、任せろ」
そういうと男は素早く馬にまたがり、港の方向へ走り出した。私はただ白雪が戻るのを信じて待つのみだ。
いつも私は相手の無事を祈って待つだけだった。そんなのは嫌で薬学に剣術、体術とたくさんのことを身に着けたつもりだったけど。今回ばかりは役に立たない私が心底憎たらしかった。役に立てなきゃ意味ないよ。
ぎりっと握り締めた手からは爪が刺さり、僅かな痛みから冷静になることができた。