第1章 ~始まり~
白雪は城に一度向かうというので途中で別れた後、私は雑貨屋で必要なものを買いそろえていた。
何かの視線を感じて、路地裏に入ると気配は背後に立った。
「私に何か用があるようですね?」
「そうじゃなかったら声なんてかけねぇよ」
「悪いですが、お金は先ほど使ってしまったのであなたのような人にあげられるようなお金はないですよ」
「ふん。そんなはした金よりお前を貴族に売り渡したほうが金になるさ」
「私を売り飛ばす?やれるものならやってみなよ。まあ、お前みたいなやつに負ける気はないよ」
あざ笑うような目で男を見上げる目線はどこか狙ってはいけないものを狙っているようでそれは正に蛇に睨まれた蛙だ。
「どうしたの?私を売り飛ばすんでしょう?
私、夕食の買い出しに行きたいから早めに済ませてくれないかな?」
「な、舐めやがって!……っ!オラァッ!!」
最小限のひらりひらりと踊るように男の拳や蹴りを躱す。頭に血が上って単調な動きを躱すことなんて簡単だ。簡単に攻撃が避けられていることに動揺した男の動きは足元がおぼつかなくなる。そのうち男の体力が無くなってよろけかけた瞬間を狙って足を引っかける。
「うわぁ!」
「つかまえた。これで逃げられないよ。このまま警邏のもとに一緒に行ってあげるよ」
全く買い物をしにきただけなのにこんな目に会うとは....
私でこれだから白雪のほうが少し心配になってきた。