第1章 ~始まり~
ここはクラリネス王国首都ウィスタル。いつものように穏やかな風と共に小鳥たちのさえずる音が聞こえてくる。
パンに挟むベーコンを軽く焼いていると後ろから聞こえたノックの音にはーいと間の伸びた返事をすると可愛らしく自分の中では妹のように思っている少女が部屋に入ってきた。
珍しくも真っすぐで綺麗な林檎のように赤い髪を生まれ持つ白雪という少女。
彼女とはほんの数日前に私の部屋の隣に住み出した子でなんでもタンバルンで薬剤師をしていたと聞いて、とても親近感が湧きすぐに本当の姉妹のようになるまで打ち解けたのだ。
「玲葉さん。おばさんからパンをいただいたのだけど、一緒に食べませんか?」
「いいよ。丁度こちらもベーコン焼けたから。……そういえば、今日白雪はどこかに出かけるんだっけ?」
「うん。薬草を探しにコトの山へ」
「コトか。私は雑貨屋で買いたいものがあるから一緒について行ってあげられないんだ」
白雪の髪は珍しいし、タンバルンの王子が側に置かせようとしたくらいの可愛い子だから心配。私の用事さえなければ一緒に行けたのになぁ。
残念で肩を落としながら言うと暗くなる前には帰るから大丈夫だよと笑うのであきらめて白雪を見送ることにしたのだが、無理やりにでもついていけばよかったと後悔するのはすぐのことだった。