第3章 〜ラクスド砦〜
「おおい!誰かいないか!近衛兵団の者だ!」
「変だな…見張りの姿が見えないなんて」
「そうだな……」
砦に着いたはいいが、流石にこの状況は異常だ。
しばらくして砦から返事と共に色んな場所にぶつかったのか物音がして、ようやく扉が開かれた。
よろよろと出て力を無くしたようにべたんと倒れ込む。
「おい!大丈夫か!!」
「み、ミツヒデ殿!木々殿!…殿下まで!?」
「定期連絡が途絶えたから様子を見に来たんだ砦に入ってもいいか?」
「だ、だめで…!」
「主!砦の中で兵たちがみんな寝てますよ!」
寝てる?一体どういうことだ?
兵が突然現れたオビに驚いて肩が飛び跳ねるのを見て、ため息を吐いた。
「な、何者ですか?!」
「主の従者ですよ!」
「まだお試し期間だけどな…」
「え、そんな〜!オレの手綱はアンタに預けたんですからね!」
「預かってない」
全く調子のいいやつだ。白雪に矢で脅したこと、まだ完全に許したわけじゃないのにな。
「お邪魔するぞ」
「ま、待ってください!い、いけません。ここは恐ろしい魔物に取り憑かれているんです!」
魔物に?
とにかく中に入ってみるしかない。
さっきから胸騒ぎが止まらない。何かがこの砦で起こっていることは間違いなさそうだ。
***
「白雪、私はこの薬草を買ってくるからこれとこれをお願い」
「?玲葉さん、指定された量より多いような」
「これは私が個人的に買おうと思ってね。城に送るものより別にしてある」
ほらと領収書を見せて納得したように頷いた。
寒い地方の薬草だと量が必要だからそこが少し難点だなぁ。
「それじゃあ、買い終わったらここで集まろう」
「そうですね!」
白雪と一度わかれて薬草の店に入ってメモの物を買っていく。城に送ると言うとすぐに話が通る。薬室長がこの街で薬効の低い薬草を時々買うからのようだ。
領収書と代金の照らし合わせや残りのメモの薬草を確認して、更に街の人から情報を集めて街の薬草を売っているお店を訪ねて回った。街の人もお城から来たというと驚かれるけど、親切に案内してくれて助かった。
予定になかった情報も手に入れられるし。
最後はこの店。古臭い看板が風でキーキーと耳障りな音を立てて揺れている。大分古い店のようだけど、こういう店って珍しい薬草があることが多いのよね。