第3章 〜ラクスド砦〜
「んー寒い!」
見渡す限りの雪景色。反射して少し眩しいくらいに輝いて見える。
私たちは馬に乗ってラクスドまで移動していた。
「大丈夫?玲葉さん」
「平気だよ、それにしてもまさか殿下たちも一緒にラクスドに行くことになるとは思いませんでした」
「あぁ。ラクスドは俺の管轄領だからな」
「白雪と玲葉も大変だな。お使いにラクスドまで行くなんて、それにもっと驚いたのは……」
「玲葉が馬に乗れること、だな」
そう、白雪が馬に乗れないのを聞いてあらかじめ馬を用意して一緒に乗っていこうと思ったのだ。
そしたらゼン殿下と側近たちも丁度ラクスドへ用があるからと同行することになった。
「確かにゼン殿下と初めてお会いした頃は馬車移動と船、徒歩が主な移動手段で馬に乗るのはあまりしてこなかったので今回は移動に必要だと思って木々さんに指導を頼みました」
「木々が!?」
「その意外そうな目を止めろ」
「いや、だって。木々がいつも兵を扱いているのを見てると大丈夫かと心配になるだろ」
引き攣った表情で普段の兵士の扱きを思い出して青ざめるミツヒデに凍えるような目で木々が睨みつけた。一瞬でミツヒデさんの姿勢がピンと伸びるのが面白くて見ていた。
「木々さん、確かに体で覚えさせては来ますけど、その分、身につきますよ。細かいとこも説明してくれて自分じゃ気づけない癖も教えてくれました」
「玲葉はとても物覚えがいいよ。たった一日、休憩時間中に教えて身についたんだ」
それは凄いと白雪まで褒めてくる。
相乗りならしたことあったからバランス感覚と高さには覚えがあったからだと思うけど素直に受け取っておこう。
そうこうしているとラクスドの東にある街に辿り着いた。私たちはここで薬草の買い出しだけど、殿下たちは視察か。なんだかさっきから嫌な予感するから二人で殿下たちを見送った。
正直殿下と白雪が甘い雰囲気を醸し出してて横にいる自分にとってとても居心地が悪いから早く買い出しに行きたい。ぐっとメモを握りしめた。
「さ、いつまでも見送ってないで買い出しに行こうか」
「玲葉さん。なんかからかってません?」
「気のせいだよ」
にっこりと笑って街へと足を進めた。ラクスド砦の視察ねぇ。衛兵たちが噂していたのを聞いたからただの視察じゃないことを知っている。
念のため余計に買った方がいいかもしれない。