第3章 〜ラクスド砦〜
「すみません!」
「なんだ……嬢さん…?」
「このメモのものをウィスタル城へ送っていただきたいのです。代金はこれで支払います」
「んんん?なぁ、嬢さん。もしかしてルーセの弟子さんかい?」
「え……!先生のことを知っているのですか?」
突然出た知ってる人の名前に驚いてばっと近づくと薬剤師のおじさんは驚きながらも頷いた。
先生。此処に来たことあるんだ……。
「弟子ってことはまさか……お前さん。マリンフィストの……いや。すまん、薬草だったな……それにしても随分と立派になったものだ。私が聞いていたのはお前さんが五つの頃の話だからな」
「あぁ、先生が私に教えてくれることになった時ですか。確かにあの頃は私、やんちゃでしから…」
よく家族を困らせていたのを覚えている。
先生も勉強から逃げる私に苦笑していたっけ。懐かしい記憶を思い出して談笑しながら
領収書を出してもらって受け取るとおじさんに一礼して立ち去った。
あの子、直接会ったことはなかったが手紙と随分印象が違う。
あんな針のような冷たい目をしていたのだろうか。
***
「これで薬草は全部買えましたね。街の入り口まで行きましょうか」
「そうだね、帰りも白雪は乗せて貰わないとだし」
「あれ…?なんだか玲葉さん、嬉しそう……」
普段も割と白雪に向ける笑顔は三割り増しで優しいものだけど、今の笑顔はいつものと違うような。
そんな風に言う白雪にきょとんと目を瞬かせる。
白雪って昔から薬剤師やってたからか人の状態を見破るの上手いよね……。
「そう、だね。嬉しいかも。さっき会った店の主人が私の先生と知り合いだったんだ。この街に来てたことを知って嬉しくなっただけだよ」
「!そうなんですね……私も玲葉さんの先生に会ってみたいです」
「……うん、いつか……」
自分のことのようにふにゃりと笑顔が返ってきて僅かに目を見張る。ただ…会えるのを楽しみにする白雪に水をさしてその笑顔を曇らせたくはない。つい言葉を濁した。
「あ、いたいた!白雪、玲葉!ラクスド砦まで来てくれないか!」
「ミツヒデさん!ゼンと一緒に向かったんじゃ」
必死の形相で走ってくるミツヒデさんに嫌な予感が当たったことを予期して眉を顰めた。