第2章 ~宮廷薬剤師見習い~
人気のないところを選んで周りの気配を探った。なんか、この城に来てから変な視線を感じてずっと気になっていたのだ。
周りに衛兵や使用人たちがいないのを確認してから呟いた。
「ねぇ。いつまで隠れている気?気配には気づいている出てきなさいよ」
私の声に一呼吸おいてから現れたのは最近見たことのある顔だ。
こいつ、この間会ったときは下町でのらりくらりと依頼をこなして暮らしているやつかと思ったのに次に会ったのはこの城だなんて偶然だとは思えないくらいだな。
「やぁ、お嬢さん。城の中で会うなんて奇遇だね」
「確か.......オビ、だったかな。どうしてこの城の中に?この城は関係者以外立ち入ることはかなり難しい。どうやって衛兵たちの目をごまかしてきたの?
城の人間に危害を加えるつもりなら衛兵を呼ぶか、私が倒すかの処置をとらせてもらうけど」
袖に仕込ませたナイフを見せてにっこりと笑ってみせるとオビはどうどうと両手を前に出す。毒は塗ってないから安心してほしい。当たり所が悪くても数日体が痛くなるだけだから。
「おっと。怖い怖い、俺はここの偉い人から滞在の許可もらってるからちゃんと関係者ですよ」
「ふうん。あなたみたいな人を城で雇うもの好きがいるのね」
「物好きって。ぷっ、仮にもお嬢さんの上司に向かってそういいます?確かにあの王子サマはちょっと変わっているけどね」
「は?王子.....ってまさか」
私の頭に思い浮かぶのはこの国の王子二人の顔。一人はこの城にまだ戻ってきていないそうだから可能性があるのは銀の色をもつ白雪が慕っている王子だ。
確かにあの王子はこいつでも引き入れそうな感じだ。
王族って使えそうなら使うっていう判断がしっかりしているのよね。
母国の王子もそんな感じだ。平民でも裏稼業にいたものも優秀なものを雇うことがある。周りの大臣達が止めようとしても自分の信念を貫き通している人たちは躓くまで止まらない。
「まぁ、正式に雇われているっていうのなら私はこれ以上何も言わない。ただ、同期の白雪にちょっかい出そうっていうのなら…」
そこで言葉を区切り、手に持つものを見せた。
鈍く光るナイフを見せた。城の中じゃあまり使用用途がないとは思っていたが、自衛ように隠し持ってきていて正解だった。