第2章 ~宮廷薬剤師見習い~
「あ、もしかして…それにしては子どもっぽいって思ってます?」
わざと子どもっぽくミツヒデさんににこりと笑って見せると慌てて首を振るが、すごく分かりやすい。本当に王子の側近とは思えないくらいの素直な人だなぁ。その代わり、木々さんはその隣で冷静に考えるのか。凸凹な二人に見えるけどお互いに信頼してるのが伝わってくる。
「冗談です。ミツヒデさんは素直な方ですねー、ふふ。白雪の周りにはいつも優しい人が集まるんだから凄いなぁ。……私は玲葉。平民なので名字はありません。マリンフィスト王国ってとこから来ました。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。ところでマリンフィスト王国から来たってのは初めて知ったな…」
「私も!どうして教えてくれなかったの?!」
「といっても話すようなことがなかっただけだよ」
「マリンフィストってタンバルンの隣国だったか?大分遠くから来たんだな」
ゼンは頭の中で地図を思い浮かべて位置関係を思い出す。確か海に面した領土が多くて首都はヴァルトトでこの国とは余り交流はない国で一度この国に招待したことはあったはずだ。
どうしてわざわざこんな遠くの国の城で薬剤師やろうと思ったのかとゼンは不思議に思った。
「何でここの宮廷薬剤師やろうと思ったんだ?宮廷薬剤師なら故郷の国でもできただろう?」
「あー。…この国でやらなくてはいけないことを見つけたのと、もう一つは昔私に薬学と医学を教えてくれた人の故郷がこの国だったからでしょうか……」
「へぇ、玲葉の先生がこの国出身だったのか」
「もしかしたらリュウは私の先生のことは知っているかもしれませんね。私の先生はガラク薬室長とは研究仲間だったそうですから」
「薬室長と?!」
「ということはきっと優秀な方なのだろうな」
優秀なのは間違いない。私はその言葉にこくりと頷いた。
あの人は確かに優秀な人だ。まああの人は自分のことを器用貧乏なんだって笑って言っていたっけ。
ガラク薬室長のことを尊敬できる研究仲間。自分と同じで研究をしてると周りが見えなくなるからしょっちゅ限界まで実験をしていて他の研究仲間に二人して無理やり布団に連れていかれたとあの人は笑いながら話してはいたが、今思っても笑い事じゃないような気がするが。
その後はゼン王子の執務が残っているとその場で解散した。
白雪とは用事があると誤魔化して途中で別れたが。