第2章 ~宮廷薬剤師見習い~
「これから大変なことが起きそうね…」
それも悪くないと思っているけれど、それが悪い結果をもたらさないことを祈るばかりだ。
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中庭だからこのあたりのはず。きょろきょろと周りを見ていると微かに話し声が聞えてきてそっと耳を澄ますと聞き覚えのない声が二人いるな。白雪のいっていたゼンの側近かな。
「白雪、見つけた。薬室長がここにいるって言ってたけど。もう移動しちゃったかと思ったよ。リュウさんも一緒にいたんだね」
「リュウでいいよ。俺のほうが年下だし…」
「いえ、上司ですのでそこはしっかりしないとですから」
「…白雪さんと同じこというんだね。でも、変な感じするからリュウでいい」
「…………わかりました」
渋りに渋って頷く様子に白雪はくすくすと笑っていた。
「玲葉さん、白雪さん。俺は薬草園に行って
くるけど、二人の業務はこれで終わりだから。それでは王子。俺はここで」
「おう!気を付けて戻れよ!」
リュウを見送った後、そういえばと白雪が思い出したようにこちらを見つめた。
「そういえば玲葉さん!私を探してたんですか?」
「うん。薬室長がゼン殿下の薬歴を持って行ってるのが見えてね。もしかしたら白雪泣いちゃうかもと思ってタオルを差し入れにね」
はいっていいながら冷たい水で濡らしたタオルを渡す。目の腫れも少しだけましになるだろう。何もやらないよりはましだ。
「な、なんで泣くってわかったの?!」
「白雪は優しいからね。そうなるだろうなって何となく。…会うのは久しぶりですね。第二王子ゼン殿下?」
「やっぱり気づいてたのか…」
「当たり前ですよ。いくら別の国から来たとはいえ、この国の王族の容姿と名前くらい一致してます。そこのお二方は初めましてですよね」
側近だと聞いていたけど、女性も剣士をしているのか。私は剣を得意としないから共に戦うのは少し難しいかな。
扱うことはできてもやっぱり専門に鍛えている人には負けてしまうだろう。私の持っている短剣じゃリーチ的にも打ち合うには少し不利だし。
「そうだな。白雪から友人で同僚になったとは聞いていたが、会うのは初めてか。俺はミツヒデだ。ゼンの側近をしている」
「同じくゼンの側近の木々。白雪の四歳上って聞いてたけどそれならミツヒデの一つ下か」
「俺の一つ下か……」
じっと私の容姿を見てくるので思わず笑いながら口を挟んだ。