第2章 ~宮廷薬剤師見習い~
ガラクに案内されると珍しい薬草が瓶に詰められ棚に入っていたり、大量の乾燥させた薬草が保存されていたりと流石は城にある薬草庫だ。
失礼だと思いながらもこれから使うことになる薬草庫内をキョロキョロと見回した。
「凄いです。私のいた場所でも滅多に見つけることのできない薬草まであります!」
「確か玲葉くんはマリンフォレストの出身よね?あんな遠い国からわざわざ宮廷薬剤師目指してくるなんてね」
ガラクの楽しげに話す声に私の足は自然と止まっていた。
「………薬室長、何が言いたいんです?」
思っていたより硬い声がでて、自分でも驚いた。無意識のうちに自分で考えないようにしていたからかもしれない。
何か言いたげなガラクの顔を睨む。こんなところ、白雪には見せられないな。とこれくらいで動揺してしまった自分が嫌になる。
「いや、まさか君がこの国にやってくるとは思わなかったからね。私の研究仲間だったルーテが先生として薬学を教え込んでいるって子の特徴は前に手紙で知ったんだ。ルーテは元気にしてるかな?あの子、マリンフォレストに行ったきり連絡をよこさないからね」
「先生ですか?先生は……」
震える声で囁くように言った言葉にガラクは僅かに目を見開くと少しして、そう…と呟いた。ガラクは半歩後ろを歩く見習いの姿を横目に見て、寂しそうに表情を歪めた。
そんな顔して信じるわけないじゃないのと。
___先生は……私が殺したんです。
その場はそのまま少し気まずい雰囲気の中、薬草庫の説明が始まった。
***
何も聞いてこないガラクさんに正直ありがたく思った。あの時のことはもう思い出したくなかった。
…もうあの赤は見たくない。拾い上げても拾い上げても手のひらからこぼれていくような感覚。
「……それじゃあ、玲葉くん。薬草棚の整理と、薬研がそこにあるから常備薬の在庫を増やしてくれるかな」
「常備薬…ですか」
「そう!創傷被覆材に頭痛薬とかね。リストを置いておくからよろしくね。
私は白雪くんに渡したいものがあるから少し空けるわね」
ガラクは棚から必要なものを二冊取り出すと、メモを残し、戻って行ってしまった。