第2章 ~宮廷薬剤師見習い~
「アケギじゃなくユラを植えてあるのを答えるなんて、この問題を考えた人と是非話してみたい」
ユラシグレの花は赤い可愛らしい花が咲くが、根に毒素を作る。何となく私はこの薬草が白雪にどこか似ている気がして、気に入っている植物の一つだったのだ。
白雪ならきっとこの試験を必ず突破して宮廷薬剤師見習いになれるだろう。
これからも白雪と行動を共にするというのならあの第二王子や今はこの城からは不在の第一王子にも会うことになるかもしれない。
そのつながりがあれば…きっと。
やだなぁ。白雪を利用しているようで罪悪感で頭がいっぱいになりそう。
でも、やるしかない。目的を果たすためにもこの国の宮廷薬剤師になると決めたのだから。
しかし、残りの時間がまで管理をするというのも暇になるし、こうなったらユラを植え替えて影響を受けないようにするか。
植え替えているとき、土で泥だらけになっているのに目的のためにというよりも、他の人から見ると薬草を扱うのが楽しくてしかたないように見えることに本人は気づかなかった。
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そして翌朝。ようやく試験は終わった。
ユラの植え替えを終えて、記録書に使った備品の記録を書き終え、不備がないか確認しているとガラリと戸が開く音が聞こえて顔を上げると薬室長のガラクさんと確か隣にいる人は八房さん…がこちらに向かって手を振っていた。
どうやらいつの間にか記録書提出の時間になっていたようだ。一度集中すると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。
「こちらが記録書です。ユラがアケギの育て方で植えられていましたので植え替えておきました」
「……ぷっ!あ、あなたも植え替えるとは今年の子たちは面白い子が多いのかしらね」
「あの結果は…?」
心底面白くて仕方がないと笑うガラクに戸惑っていると後ろから室長?と呆れたように呼ぶ声に笑いをこらえながら私の問いに答える。
「もちろん、文句なしの合格です!さっそく貴方には宮廷薬剤師見習いとして働いてもらうわ。よろしくね、玲葉くん」
よかった。ちゃんと合格できて。先生が私に医学の知識を持っておいたほうがいいと薬学の本も一緒に覚えさせられたおかげだ。
これで白雪も合格していれば、同期として一緒に活動できるけどどうかな?