第18章 雲間から望む
信長の乾杯の一声から始まった宴は、普段と何も変わらず賑やかな物になった。
座布団にもたれかかるの食事は、初めは信長が食べさせていたが、献立の説明をしたいと政宗が代わった。
信長は、の表情を見ながら、自身の膳を摘まみ酒を飲み始めた。
今日くらいは政宗の茶に酒は混ぜないで、とが言えば苦笑いをして信長の酌を始めた光秀。
三成の世話をしながら、にこにこと酒を飲みながら佐助と家康から、不在の間の話を聞く秀吉。
「やっぱりみんなと食べると美味しいね。信長様、干物食べました?」
『あぁ、酒に合う。』
『干物をほぐして粥と合えたぞ。』
「政宗、左手でスプーン、あ、匙持てるよ!」
『いや、俺が甘やかす!ほら、食え。』
政宗は匙をの口元に寄せた。
『ほら、口開けろ。口移しがいいか?』
「政宗! もぉ、。」
は、ぱくりと粥を口に含んだ。
『次は何にする?』
「だし巻き卵。」
『よし!』
隻眼の青い瞳が、ゆっくり味わいながら食べるの姿を映す。
(旨そうに食べるな。まったく、可愛いやつ。)
の左手に湯飲みを持たせ、互いに茶をすする。爽やかな水出し茶をこくりと飲み込んだ、その時だった。
『な、何て話だよ、それぇ!』
『ひ、秀吉公、落ち着いて!』
『あぁ、やっぱり。言わなきゃよかった。』
秀吉が立て膝になり、目に涙を溜めながら、信長の方を見ていた。
「…どしたの、秀吉さん。」
『あれだろ、を助けた子供達の話。』
『信長様、面倒な事になりそうですよ。』
光秀がくくっと悪戯に笑う。
『あぁ。…こちらに来るな。』
『さて、酌を代わりましょうか。』
『おっ、御館様!御世継ぎや姫が、ゆっ、夢に…』
『はぁ。…そうだ。父上と呼んだ。の事は母上と。』
『ちっ、父上…』
「秀吉さん、泣かないで…」
『!何言ってんだ!素晴らしい奇跡のような話じゃないか!近い未来に御世継ぎも姫も産まれるんだぞ?母上を助けに来てくれたなんて、健気で愛らしいじゃないか!』
『産まれるんだぞ?って、産むのはだけどな。』
『政宗、そう言うことじゃなく、な!』
秀吉は、片手で頬を拭うと、に抱き付いた。