第18章 雲間から望む
突然始まった現代カラオケ大会は、『休めと言ったのに、いつまで歌うんだ。』としびれを切らした家康が部屋に来て、二人を叱るまで続いた。
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涼しげな秋風と共に、夕げまで二刻弱休んだは、ほのかに香った沈香の香りで目が覚めた。
『政宗が夕げの支度が整ったそうだ。』
「もう、そんな時間ですか?」
『ここに、全員の膳を運ぶそうだ。貴様のは、俺が食べさせてやる。
褥も一度片付けて、天守に移すように話した。壁に座布団を当て座らせようと、咲が座布団を集めに行ったぞ。起きれるか?』
「はい、楽しみ。宴みたい。」
『宴だ。貴様の快気祝いと佐助や皆の労いだ。佐助は、明日の昼前に安土を発つそうだ。』
「そうなんですか…。」
『貴様が寝てる間に話に来た。こちらが落ち着いたようなので、の療養の為に謙信をなだめてくる、とな。』
「何にもお礼できなかったな。」
『貴様が良くなることが、あやつは一番喜ぶであろう。俺からは、貴様との逢瀬を許可した。また何時でも会い懐かしき故郷の歌を歌え。』
「…またあの丘に行って、歌を歌ったり皆で遊びたいです。」
『ああ、そのためにも、リハビリとやらをやりよく食べよ。』
「はい。…んっ。」
行灯の灯が、重なる影を撮す。
久しぶりの口付けは、お互いの【命】を確かめるように次第に深くなっていった。
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カチャカチャ
夕げの膳を並べる音がする。
咲が集めた座布団を背もたれに、は宴の準備をする女中の姿を眺めていた。
時々、女中達と視線が合えば、優しく微笑んだ。
『お元気そうで安心しました。』
「ありがとう。心配かけてごめんね。」
弥七と吉之助も顔をだし、咲と共にの無事を喜んだ。
次第に運ばれる政宗の丹精込めた料理に、は目を奪われる。越後の川魚の干物、青菜の白和え、煮物とだし巻き卵。
の粥には、奥州からの漬物が刻んで乗っていた。
『飲み込みやすいようにしたからな。ゆっくり食べろ。』
「暑いのに、こんなに沢山ありがとう。」
『旨い飯は、活力だからな。』
『また、随分豪勢じゃないか。』
『ほんと、政宗さんは甘いんだから。』
『家康のは、味付け違うからな。ちゃんと膳を見ろよ? 秀吉の摘んできた野苺は、食後にな。』