第18章 雲間から望む
城門では、信長を挟むように政宗、家康、三成と並んで、秀吉と光秀の到着を待っていた。
『ちょっと…遅くないですか? 国境抜けたなら、もう着く頃ですけどね。』
『途中で喧嘩でも始めたか?』
『早く揃って様を囲みたいですね。』
三人が其々話す姿を、信長はただ静かに聞いていた。
(いつのまにか、を中心に織田軍の結束が固まっている。は本当に不思議な女だ。)
いつの間にか秋を含んだ風が、残暑の陽射しと共に信長の髪を揺らす。
『あ、来ましたね。…なんか持ってる?』
『仲良く、寄り道してきたのか?』
『只今、戻りました。』
『出迎え、ありがとうございます。』
光秀と秀吉は、馬から降りると信長へ頭を下げた。
『事後処理、大義であった。休むがよい。』
『…は?』
『二日前に目を覚まし、今は佐助と共にいる。』
『…秀吉さん、かご一杯に、何持ってきたんですか?』
『ん、あぁ。野苺だ。国境の林辺りにあってな。
に、と思って。政宗、何か作ってやってくれ。』
『野苺ねぇ。煮詰めてから葛にかけるか。あとは…餅にかけるか。あいつ甘味が好きだからな。
…それより光秀、お前どうした、それ?』
『ササユリだ。』
『あぁ、知ってる。それで?』
『兄様が、せっせと野苺を摘んでいたのでな。待っている間に、姫に渡そうと手折ってきた。』
『光秀さんが… ユリ。』
『何かあるのか、家康。』
『いや、ありません。』
『は、まだ起き上がるだけで褥からは出られん。喜ぶであろう。』
『はっ、ありがとうございます。
…ほらな。家康。』
『はいはい。』
信長は颯爽と踵を返し城内に入った。
それに続き、秀吉と政宗、光秀と家康、三成が入っていく。
「あ、お帰りなさい!」
『っ!だ、大丈夫なのか?』
「あ、うん。長い間は座っていられないけど…大丈夫かな。」
『傷はどうだ?』
『光秀さん、もう血は止まって少しずつ動かしてます。…お花ですか?』
『ササユリだ。花、好きだろう?』
「綺麗…。光秀さんが?」
『あぁ、兄様が野苺摘みをしてる間にな。』
「野苺?」
『あぁ。に食べさせてやりたくてな。政宗が甘味にしてくれるそうだ。』