第17章 嘘のような奇跡
『贅沢すぎる監視で療養するんだ。言うこと聞いておけよ。』
『…政宗さんの言う通り。わかった?。
秀吉さんが帰ってきたら、付きっきりになるよ、きっとね。』
ふっ、と家康が皮肉混じりに笑った。
『煩い姑だからな。』
信長もまた、にやりと口角を上げる。
『咲、貴様もこやつには厳しくしてくれ。』
『はい、畏まりました。』
「信長様! もう、しませんてばっ!」
先ほどまでとは比べ物にならないような優しい空気が、の周りを包み込んだ。
※
『家康、の夕げの味見を頼みたかったんだ。
厨にいいか?』
『はい、傷口も開いていませんでしたし。監視もありますからね。
…あ、。明日から佐助と決めたりはびり、始めるから。』
二人は信長に一礼し部屋を出た。
『私は踏み机を片付けてまいります。』
『お手伝い致します。』
『俺は、夜の警備の打ち合わせを。』
三成と咲、佐助もまた、部屋を出た。
夕暮れが、襖に二人の影を残す。
それが重なっていくのを、5人は数歩先の廊下から見守るのだった。
※
厨には、四人が自然と集まっていた。
瓜を柔らかく煮て崩し、野菜の煮汁と合わせとろみをつけた物を、家康、三成、佐助が試食していた。
『粥にかけてみようと思うんだ。どうだ?』
『いいんじゃないですか?』
『優しい味ですね。さすが政宗様です。』
『愛情が詰まってますね。』
『だろ? 越後からの食料も楽しみだぜ。』
政宗は、の夕膳を手早く用意し始めた。
『…皆様は、どう思われましたか?』
三成が、ぼそりと呟いた。
『…なにが?』
『お二人のお子さんの話ですか?』
家康の問いに、佐助が答えた。
『文献にはあの様な夢物語はありませんし、未だ聞いたこともありません。ですが、お二人は本当の事のように話されていましたね。』
『産まれてくる子が、命を助ける。なんて有り得るのか?』
『佐助、あんたの時代だと有り得るの?』
『いえ、聞いたこともありません。』
『…じゃあ、なんなの?夢?』
『夢にしちゃあ、現実的すぎるぞ。』
『…でも。』
佐助が夕闇に染まり始めた空を見上げながら、呟く。
見上げた空には、キラキラと星が輝き始めていた。