第17章 嘘のような奇跡
「…大変だったんですね。」
『戦は、たいしたことなかったけどな。』
そう言うと、政宗は退屈そうに溜め息をついた。
「じゃあ、秀吉さんと光秀さんには、明日会えるんだね。怪我もなくて良かった。」
『佐助は、いつ帰るのさ?』
家康の声に、佐助はピクリと肩を動かした。
「謙信様達も大変だったんでしょう? 大丈夫なの?」
の質問と同時に、信長を除いた三人の視線が
佐助に集まった。
『いつ、着く?』
『「え?」』
『ははっ。』
信長の声に、三人が驚き、佐助が笑いだした。
『まさか…』
『さすが信長公。何でもご存知でいらっしゃる。』
『貴様が変わらず此処にいるということは、問題なくことが進んだということ。さすれば、越後から直ぐに発ってくるだろう。』
『…謙信様はそのつもりでした。しかし、戦の後処理もせずに越後を発つのを幸村が止め…。』
『はぁ? なんなの、あいつ。』
『俺からも、まださんの体調を考えると静かに静養する必要があるので踏みとどまるように、と伝えました。』
『家臣に説得されるって、大丈夫か?お前んとこ。』
『して、あやつは何と?』
『…こちらを、信長公へ渡すようにと。』
佐助は懐から書状を出し、信長に手渡した。
【 一月後、貴様を討ちに行く。それまで、腑抜けの貴様の代わりに佐助を、そのままの護衛とする。越後から、の為に薬、薬草、反物、米、干物、野菜を送る。】
『ふっ。』
『明日には、着くと思われます。』
信長は、謙信からの書状を、隣に座る家康に渡す。
家康が広げると、政宗と三成も一緒になって読み始めた。
『へぇ、薬草か。』
『越後から食料か。腕がなるぜ!』
『上杉殿はお優しいかたなのですね。』
『馬鹿じゃない? それは、にだけだから。』
「じゃあ、あと少し一緒にいれるんだね。」
『あぁ、俺も嬉しいよ。』
と佐助が見合せて笑い合う。
信長は、左手での頭をポンと撫でた。
『…まだ飲むか?』
いつの間にか空になった茶碗を見て、政宗が声をかけた。
「じゃあ、お野菜の方を半分くらい。」
『無理しないでよ。』
「美味しいから。」
『じゃあ、少しな。』
政宗は、信長から茶碗を受け取った。