第17章 嘘のような奇跡
『ゆっくり飲めよ?』
が目覚めてから、丸一日が経った。
家康の朝の診察と処置を終えたは、意識もはっきりし、少しずつ話せるようになっていた。
そして今、信長に背中から抱き締められるように、もたれ掛かりながら政宗が用意した重湯と野菜の煮汁を口に含んでいた。
「お、いしぃ。」
『あんた、ずっと寝てたんだし、全部飲もうとか考えないでよ。』
『ゆっくりだぞ?』
心配そうに家康と政宗が、の右側に並んで座りながら見守っている。
は、動かせる左手で茶碗持っている。
しかし、体力が落ちているのもあり茶碗をしっかり持てずにいた。
それを見越していたのか、背中からの体重を支える信長は自然と右手を茶碗に添えていた。
『旨いか?』
「…はい。」
信長の問いに、嬉しそうに微笑むを見て、家康は、ふぅと一息をつき、政宗は笑顔を見せる。
『食うってことは生きてるってことだ。
体力も食わなきゃ戻らねぇ。俺がしっかり作ってやるから安心しろよ。』
「うん、政宗のご飯、楽しみにしてる。」
『最初はお粥や消化にいい食べ物ですからね。』
『はい、はい。御典医様。』
『はぁ、…ふざけないでください。』
「ふふっ。」
が穏やかに微笑むと、二人は目を細めた。
『…失礼します。』
襖の外から、三成の声がした。
『なんだ?』
『はっ。信長様、皆様、お揃いでしたか。先程、光秀様の忍が報告に参られました。明日には帰城されるとのことです。』
『ようやく、皆さん、揃うんですね。』
佐助が、三成の後ろから顔を出す。
『煩くなるな。』
『賑やかになる、だろ?』
家康と政宗の返答に、微笑みながら三成と佐助はの足元に腰を下ろした。
「信長様。」
『なんだ、辛いか?』
『どうしたの、。痛む?』
「違うの。…ねぇ、佐助くんは、なんでいるの?」
『ふっ。』
『信長様、まだ、話してなかったんですか?』
『あぁ。これからゆっくり話すつもりだった。』
「なにか、あったんですか?」
『まぁね。』
家康がちらりと佐助を見る。
佐助は、にやりと笑いながら眼鏡を持ちあげた。