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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第15章 おかえり


『はい。やはり敵方は統率が取れず、総崩れだったようです。三日後には帰城を始めると。』

『西からここまで、急いで一日半。こっちに着くのは早くて明後日か。』

『やはり早かったですね。』

『総崩れ、政宗さんが楽しめなかった感じかな。』

『上杉の小競り合いも終結したと連絡がありました。』

『じゃあ、あんたは帰るの?』

『帰城を確認してからにします。』

『あっそ。…。帰ってくるよ。良かったね。…!!』

家康は右肩を撫でながら優しく呟いた。
すると、それに応えるようにの目尻から一筋の涙が零れた。

『!聞こえてるの?』

いつの間にか魘されることもなく穏やかな寝息に変わっていた。

『家康公、もう少しなんじゃないですか? いい方向に向いてるんじゃないかと。』

『うん。』

西陽が開いた襖から差し込む。
その陽射しはまるで、暗闇で包まれた安土の出口のようで、浴びれば暖かい。

縁側には小さな虹が出来ていた。





翌日。

『家康様!様が!』

咲の声が朝の陽射しと共に城内に広がった。

『どうしたの?』

傷薬の調合を止めの部屋に駆け寄ると、咲が口を押さえながら涙目での左手を握っている。

『!?なに、どうしたの?』

うっすらと目を開けたは、空を探るように左手を動かしていた。

『三成!佐助!…咲、呼んできて!
、聞こえてる?わかる?』

瞬く間に、二つの足音が廊下に響いた。

『意識が?』

『様?』

『…、意識が浮上したり眠ったりを繰り返してる。深い眠りじゃないんだけど…』

『呼び掛けましょう!』

『あぁ。』

『さん、さん!』

咲がの左手を握り、佐助がその隣で声をかける。

『政務はこちらでやります。』

三成は文机を縁側近くに置くと、この度の戦の後方支援の処理を始めた。

『水、汲んでくる。』

家康は咲と佐助に任せ、部屋を出た。
季節は初夏から夏に変わっていた。
照りつける太陽で、じっとりと汗ばむ。

『暑い。』

井戸の水で顔を洗って手拭いで拭きあげる。
少しだけ微笑んだ家康は、汲んだ水を桶に移すとの部屋に向かって歩き出した。



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