第15章 おかえり
城内に、セミの声が響く。
まだ呼吸が早く、熱が下がりきらないの側では、決まり事のように三人が集まり『軍議』を行っていた。
何故か膳を囲むのもこの部屋で、『点と線』を結ぶようにを中心にすべてが動いていた。
※
が傷を負ってから六日ばかりがたった。
信長達が出陣して五日目の昼。
『?ねぇ、!』
静かな城内に家康の声が響いた。
バタバタと三成、佐助の足音が響く。
『何かありましたか?』
『さん?』
『熱がようやく下がって、傷の腫れもひいてきたんだけど …うなされてるんだ。こうやってずっと。』
は無意識に掛け布団を握りしめ、眉間にシワを寄せている。手足は冷たく、前髪の生え際は脂汗で滲んでいた。
『…どうしたのか。また熱が上がるのか…こんな症状見たことない。』
三成は、出陣前に信長がしていたように家康に向き合うように腰を下ろすとの左手を握りしめた。
『様、様。こちらです。ここにおりますよ。』
『あんた、何やってるの?』
『呼び掛ければ、少しは聞こえるのではないかと。私は家康様のように医学に長けてはおりません。
でも、出来ることを私も様のために行いたいのです。』
『さん、さん。大丈夫、心配いらない。』
『佐助まで。』
『早く起きなきゃ、謙信様が来ちゃうよ。』
『、あんたが皆を繋ぐ点なんだってさ。ほら、しっかり。』
三人がそれぞれ声をかける。
表情の変わらないは、うなされたり落ち着いたりを繰り返していた。
※
城内は、静かにの目覚めを待っている。
『どんな夢を見てるんだろ…』
夕焼けを背にして、診察を終えた家康が呟いた。
『早くふにゃふにゃ笑って、大丈夫って言ってよね。』
茜色の空から秋を感じるような涼しげな風が、の前髪を揺らす。
家康がふんわりとの頬を撫でた。
『家康様!佐助様!』
『三成、騒がしいな。』
『西からの連絡が来ました!』
『戦況報告?』