第15章 おかえり
『光秀様の忍から、無事敵地近くに到着し陣を張ったたと連絡が来ました。』
『そう、早く着いたね。この分じゃ本当に終結まではやいかもな。』
昼前に、の診察と傷の治療を終えた家康は、報告に来た三成に答えた。
『さんは、どうですか?』
『熱の出方は落ち着いてきてるみたいだ。二、三日前は峠を越えられるかって感じだったけど、今なら大丈夫そう。傷も、佐助から貰った傷薬と俺のとを交互に使ったからか効いてきてる。
あとは、何も残らなければいいんだけど。
…500年前はこういう時どうしてる?』
『えっ、まずは…医療の整った施設で治療して、麻痺等の症状が残れば、専門的な知識を学んだ人が体を動かしながら症状を和らげます。』
『そう。医学はこれから進むんだよね。』
『はい、体を切って悪いものを取り出したり、薬も進歩します。』
『…そう。
は、ここで俺の治療で大丈夫かな。』
『えっ?』
『家康様、なにを?』
『…何かあれば、安土は大変な事になる。
でも、そんなことより、俺は…。
この子に生きてほしいんだ。…薄汚い手を使っても。』
家康は、ゆっくりとの髪を撫でると、の優しく手を握った。
『…大丈夫です。俺が来てからの彼女は顔色がいい。』
『最善を尽くすって、あの人と約束したからね。
…はぁ。余計なこと喋っちゃった。
佐助、あんたこんな所で油売ってていいの?
三成、あんたも。』
『家康公、ご心配ありがとうございます。』
『いや、心配してない。』
『各方面からの報告も落ち着いています。安土の守りも三成公の采配で鉄壁ですからね。
…俺は夜に、ここで仕事してます。』
『家康様、後方支援の手はずは整えました。
偵察からの報告からも、敵方はあまりの粗末な有り様で。政宗様が満足出来るほどではなさそうなのです。
ですから、今は落ち着いています。
…ご心配ありがとうございます。』
『…微塵も心配してない。』
『ふふっ。』
『佐助、何笑ってるの?気持ち悪いな。』
『…いえ、このような会話を聞けるなんて、嬉しすぎて。』
『変な居残り組だからね。さ、俺も政務と薬作りしなきゃな。何かあったら教えて。』
家康は、咲にを任せるように話すと立ち上がった。