第14章 約束
『俺の子で…幸せか?』
『『…。』』
『魔王と呼ばれ、恐れられる俺の子で、幸せか?』
目の前の二人は、互いに顔を合わせてから笑って話始めた。
『幸せじゃなければ、こんなことしませんよ。』
『偉い人に起こられる覚悟で来たんだからね!』
『母上が、貴方は【悲しみも苦しみを知り、それを優しさに変える人】だと話してました。
そんな貴方の背中を、俺は現実で見てみたい。』
『沢山抱き締めてくれたら、もう十分、ね。兄様。』
『あぁ。そうだな。』
ふいに、二人が天を仰いだ。
『ほんとに眠りが浅いんですね。もう時間のようだ。』
『必ずよ、必ず安土に、母上の所に早く帰ってね!』
『約束、ですからね。俺が母上を助けた意味かなくなる。』
『わかった、約束する。』
『良かった!』
『…では、来る日まで。父上、また。』
『父上様、またね!』
『あぁ、また、会おう。次は現で。』
『…!ねぇ、あの子の事は?』
『あぁ、そうだった。
…父上、最後に。』
『なんだ?』
『お二人から産まれるのは俺とこの子と、もう一人。
その子をまだ力が弱くて来れなかったけど、お二人を案じていました。』
『三人か…』
『賑やかでしょう?』
『あぁ、楽しみだ。』
『では、時間ですね。約束ですよ?』
『父上様、母上を助けてね!』
『わかった。案ずるな。』
『…様! 信長様!』
『…秀吉か。』
『お疲れなら天幕へ…』
『いや、。俺はどのくらい眠っていた?』
『半刻あたりかと。』
『そうか。』
俺は立ち上がり雲間から顔を出す月を眺めた。
【約束ですよ!】
【夜明けと共に出立の準備を。】
【現に心と体を一緒に引き寄せるために、貴方の声かけが必要なんです。】
【父上様、母上を助けてね。】
ふっ
『…案ずるな。』
『…? 信長様、なにか?』
『光秀の到着により、事態を変更する。』
『はっ。』
『秀吉と光秀は三日後の出立までに政務を引き継げ。
俺と政宗は明日明朝に安土へ戻る。』
『明日、ですか?』
『何かあったんですか?』
『が、そろそろ目覚めるそうだ。』
『は?』
『聞いたのだ。』
『…誰に、ですか?』
『…内緒だ。』