第12章 点と線
五人の視線が信長一点に集中し、今後の指示を待つ。
それは、現代で言う数分、数秒であっただろう。
しかし、異様なほどの静けさが、時間の感覚を失わせるようだった。
『では、…』
信長がゆっくりと話始める。
その時。
『様!様っ!
家康様!』
咲の取り乱したような叫び声が城内に響き渡った。
武将達が慌てて立ち上がると、三成が襖を開け家康が走りだし、信長は、反対の襖を蹴破った。
『咲、どうしたの?』
『!』
『様が目をうっすら開けられて。そうしたら、震え始められ…』
咲の説明を聞きながら、を見るとカタカタと震える両腕と浅く早い呼吸が目に入った。
『、傷を診るよ。』
家康は躊躇なく右肩口を開ける。
信長は、家康の対になるように腰掛けの手を握っている。
痛々しい、まだじんわりと血の滲む傷を一瞬見た秀吉と政宗、光秀は眉を歪ませ怒りを露にする。
また三成は、俯くように目を背け涙をにじませた。
『先程より少し腫れてきています。?
わかる?』
『はぁ、はぁ…』
の小さな体はカタカタと揺れ、息づかいも荒く今にも何か悪いことが起こりそうだった。
『。』
信長がゆっくりと声をかける。
すると、はうっすらと目を開けた。
「の、…な、が…ま。」
『『『!』』』
その場の全員が声を張り上げた。
「の、ぶ…、が、ま。だい、…ぶ?」
『あぁ、大丈夫だ。貴様に守られたからな。』
「よか、った。みん、…な、は?」
『あぁ、無事だ。案ずるな。』
「ひ、で…し、さん。」
『あぁ。いるぞ、大丈夫だ。』
「み、つ、…でさ、ん。」
『ここにいる。』
「ま、…む、ね。」
「おう、大丈夫だ。」
「い、…や、す。」
『うん。ちゃんといる。』
「み、…な、りく、ん。」
『はい、様、おりますよ。』
は、全員の名前を呼び終えると優しく笑い一筋の涙を流した。
「よか、…た。の、ぶ…さ、ま。」
『なんだ?』
「あ、い…てる。みん、な。だ…、すき。」
『?』
『何、言ってんだ?』
『おい、!?』