第12章 点と線
『御館様、いつでも軍議を始められます。』
の褥が引かれる部屋の隣の部屋の襖が開く。
の左手を握り胡座をかいて座る信長に、秀吉は声をかけた。
『よし。家康、良いか。』
『はい。咲、あんたにここを任せる。どんな小さな事でも何かあったら直ぐ呼んで。』
『承知いたしました。』
信長はの髪をひと撫でし、家康は改めての呼吸と脈を確認する。
そして二人は音もなく立ち上がった。
仮の軍議の場となった部屋には、すでに光秀、政宗、三成が普段の広間の通りに座っていた。
家康、秀吉が所定の位置に座り、信長が上座に座ると五人が姿勢を正した。
『まずは、襲ってきた奴等について。』
静かに発せられる信長の声は怒りと憎しみが入り混じるようで、誰もが捕縛された彼らに陽の当たる未来がない事が手に取るようにわかった。
殿を勤めた秀吉、光秀が順に話始める。
『襲ってきたのは四人。光秀と政宗が始末したのが二人、後二人は捕縛しています。』
『二人を尋問していますが、まだ何処の者かは吐いていません。しかし、所持していた刀や衣類からある筋が浮かび上がりました。』
『光秀、どこだ?』
『はっ、二人が身に付けていたものに付いた家紋、それは、以前の披露目の際にを拐い、信長様と謙信殿によって処罰された大名のものでした。』
『はぁ? 奴らは、あの後、領地没収、町人への格下げがあって、新しい大名の監視下じゃねぇか!』
『あぁ、政宗。その通りだ。しかし、家臣だった中で闇に紛れ、亡き主君の仇討ちを企んでいた者達だったのだろう。』
『仇討ちなんて、いい迷惑。』
『あぁ。だが、これで終わりかどうかはわからんからな。残党がいるかもしれん。
この件は、俺の配下に探らせます。』
『光秀、任せた。』
『はっ。…信長様、それとは別にご報告が。』
『なんだ?』
『我が配下に探らせていた西の動向ですが、小国をまとめ始めた将が出ているようで。』
『まさか、毛利か?』
『いや、秀吉。毛利は、まだ静観している。寄せ集めの中から現れた小者ではありますが、調子にのせれば痛い目に遭うかと。』
『そうか。』
『御館様、いかがいたしましょうか? 堺の視察が済み新しい武具も手中に集めましたが、の事もあります。』