第11章 隠れた太陽
信長は、青白い顔色のを見ると、奥歯をかんだ。怪我の無い左側に座り、手を握る。
ほんのりと温かいが指先は氷のようだった。
『手荒でしたが、消毒をして傷薬と化膿止め、血止めの軟膏を塗りました。まだじわじわと血が滲みます。半刻毎にさらしを変えます。』
『さん。』
『佐助、先の世の医学の知恵はないか。』
『…、俺は医師を目指してはいませんでしたから。ただ、傷を縫ったり、注射…体に薬液を入れられる設備がないので、今の家康公の処置が一番かと。』
『そう。上杉が使う傷薬や化膿止め、あればこの子のために譲ってくれない?
俺のが効かなくなったら、使いたい。』
『わかりました。謙信様の許可を得ます。
…あ、出血に対してひとつ聞いたことがあります。』
『なに?』
『足を軽くあげると、頭への血の巡りが楽になると。』
『わかった。咲、布団畳んで膝から下にいれよう。』
『たぶん、これから熱が…』
『あぁ、熱が出る。どのぐらい高いか、体力がもつか心配だけど。』
『家康公。俺、越後に戻ります。』
『あぁ、頼む。』
『信長様、失礼を。』
『…あぁ。』
音もなく立ち上がると、佐助は風のように去っていった。
そして、すれ違うように政宗が膝をついた。
『信長様。秀吉と光秀の尋問が終わりました。この件の報告や今後についてのお話がしたいと。
どうされますか?』
『…を一人には出来ぬ。
この部屋の隣を開ける。そこを、暫く政務室とする。家康もここから動けぬからな。』
『承知しました。』
政宗は、家臣に声をかけながら簡易的な政務室の準備を始めた。
『、俺はまだ貴様に見せたいものが山ほどある。俺の寿命を与えてやるから、…死ぬな。』
信長は、の髪を優しく撫でると、繋いだ左手の甲に口付けた。