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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第11章 隠れた太陽


『…頼むぞ。』

『…何を今更。俺を誰だと思ってるんですか?』

その言葉に、政宗と信長は家康を見つめた。

『織田家奥方の典医ですから。』

家康の強い眼差しが二人に向けられたあと、直ぐに家臣が持ってきた湯を受け取り、部屋に戻っていった。

『信長様。』

家康が襖を挟んで声をかける。同時に、ちゃぷちゃぷと湯で手を洗う音が聞こえる。

『なんだ?』

『佐助を呼ぶ許可を。』

『…なぜ?』

『あいつは、500年先の人間。を助ける知恵を持っているはず。なりふり構わず、助けたい。』

『よし。政宗、佐助をどんなことをしてでも呼べ。』

『はっ。』

政宗は、バタバタと部屋を去っていった。

家康は、ふぅ。と一息吐くと咲に向けて声をかける。

『よし、診察と治療する。咲、湯とさらしをたくさん持ってきて。』

『はい!』


家康は、の右肩回りから腕や背中を丁寧に拭きあげると、を抱き起こした。

「うあっ。」

『、痛いね。ごめん。でも、化膿したら命に関わるから、消毒はするよ。手荒だけどね。』

そう言うと、空のたらいをの肩の下にあて、咲に消毒用の酒を方に直接かけるように言った。

バシャッ!

「ひあぁぁっ!」

『頑張るんだ、。咲、もう一度。』

『はい。様…』

バシャッ。

「うぁっ。あぁ!」

『最後。』

『はい。』

バシャッ。

「あぁ。あっ。」

『よし、頑張った。偉いよ、。』

は、苦痛を伴う刺激で軽く発声はするが、目を開けることはない。

『傷薬と化膿止めの軟膏を準備するから、咲は傷周りを拭いて。』

『はい。』

表情ひとつ変えずに、家康はてきぱきと処置を行う。

その落ち着いた言動を、襖を挟んで信長は目を瞑ったまま聞いていた。




『どういうことですか?』

信長は、城内であるにも関わらず自身に向けられた殺気に目を開けた。

『佐助か。』

『なぜ、さんが?』

『俺を庇った。』

『…刺客は?』

『秀吉と光秀が捕らえ尋問している。…家康。』

『はい。』

『佐助だ。』

『入れてください。信長様も一緒に。』

家康の声と同時に、目を赤く腫らした咲が襖を開けた。






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