• テキストサイズ

暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第11章 隠れた太陽


信長がを寝かすと部屋の襖は閉められた。
中では家康と咲が診察と治療が始まった。

『俺はここにいる、お前達は秀吉、光秀を迎えに行け。』

『…、はっ。』

『直ぐに戻ります。』

『あぁ、頼んだ。』

信長は、政宗と三成の背中を横目で見送ると、柱に体を預けた。

『なぜ、俺は、守れない…』

信長の独り言は吹き込んだ風にかき消された。




『様、何故こんなことに…』

咲は、血まみれのの姿を見て体が動かなくなってしまっていた。
今朝、共に選んだ白から深紅のグラデーションの小袖の肩口は、赤黒く染まり所々固まり始めていた。
時間をかけて丁寧に結い上げた髪もほどけ、血糊もついていた。

『脈は少し弱いけど落ち着いてる。脱がせて傷口を見るよ。』

『…。様。』

『咲、脱がせるの手伝って。』

『…。』

家康は、上目遣いに咲を見て叫んだ。

『咲、聞いてるの? やれないなら、出ていって!』

『はっ。』

『咲、あんたはの女中頭で一番近い存在だから呼んだ。助けたいなら動いて。できないなら、外に出ろ!』

『家康様…、はい。申し訳ありません。』

『咲、左から脱がせる。』

『はい。』

『右はゆっくり、腕や肩を動かさないで小袖を引くんだ。』

『はいっ。うっ。』

咲は、ボロボロと涙を流しながら家康を補助している。

『撃たれたのは、右肩一発。まだ血が滲むな。
咲、肩と腰をゆっくり動かして横に向けて。』

『…はい。』

『…、うん。そう、ゆっくり。…よし。貫通してる。
戻すよ。』

「ううっ。」

『様!!』

『昏睡ではなさそうだ。よし。傷を処置するよ。手を洗ってくる。咲は、さらしを準備して。』

家康は、素早く立ち上がり襖を軽く開けた。

『家康。』

柱に持たれながら立つ信長が、低い声で呼ぶ。

『弾は貫通してます。まだ血が滲むように止まりませんが。』

『そうか。』

『家康!酒とさらし、診察箱だ!』

『政宗さん、ありがとうございます。』

『あぁ、光秀と秀吉も無事に戻った。今、三成と共に捕らえた刺客に尋問してる。』

『そうですか。』

『入り用はあるか?』

『湯を。』

『わかった!…なぁ、家康。』

『なんですか?』











 

/ 101ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp