第11章 隠れた太陽
『信長様、乗ってください。』
三成が信長の愛馬を引き寄せた。
家康がを抱き寄せると、信長は颯爽と愛馬に跨がった。
『三成、ゆっくりだぞ。左側を信長様に。揺らすなよ!』
家康と三成が、を馬上の信長に預けた。
『俺、秀吉さんの言う通り、先に行きますよ!』
『あぁ、の支度を頼む!』
『政宗様、信長様の脇を!』
『わかってる!殿、頼むぞ。捕縛も済んだ。家臣達もいる。何もないと思うが… やられるなよ?』
『誰に言ってる? 早く行け!』
「ふぅっ!」
『!』
信長の叫び声に、政宗と秀吉は振り向き、光秀も眉を寄せた。
抱き寄せる信長の左手は、の傷口を押さえ血に染まっていた。
『の意識が落ちそうだ。呼吸も荒い、行くぞ!』
信長は走り出し、ぴったりと三成、政宗が追う。
『くそっ、何でだよ!』
バァン!
秀吉の叫び声と、光秀の捕縛した刺客を狙った空音が、丘に響き渡った。
※
『咲、咲!』
家康が城につくと、何度も叫び女中頭を呼ぶ。
家康の血に濡れた装束を見た彼の側近が驚き声をかけた。
『何事ですか!』
『お怪我を?』
『お前達は湯を沸かせ!綺麗な布と消毒の酒、あと、俺の御殿から診察箱持ってきて!』
『咲!』
『家康様!何事ですか!』
『咲、…落ち着いて聞いて。が撃たれた。』
『え?』
『丘で信長様を狙った刺客に襲われた。信長様を庇って
は撃たれた。もうすぐ信長様が連れてくる。』
『、さま…。』
『咲、褥を準備して。それと着替えとさらしを準備するんだ。時間がない。』
『様が…』
咲の瞳から大粒の涙が零れた。
『咲!!』
『は、はい!』
城は慌ただしく動き出した。
※
『家康!家康!』
『政宗さん、こっち!』
『信長様、あちらです。』
『信長様、は?』
『あれから直ぐに、意識を手放した。血がまだ止まらない。息づかいはあるが。』
『様!』
『咲、あんたも頼りなんだ!落ち着いて!』
『酒とさらしは?』
『こちらに!』
『じゃあ、信長様、褥に寝かしてください!』
『家康、頼むぞ。』
『命に代えても。』