第2章 歌声と噂
『西に不穏な動き?』
『あぁ。友好協定やの後ろ楯が上杉と武田になったことで表向きは謀反の種も少くなった。
しかし、西の同盟国の国境では、我らが祝言や上杉達の方に目が向いているからと、謀反を企てる輩が集まり始めている。』
『規模は?』
『まだ小国が集まりつつあるだけで、それを取りまとめる様な将は出ておりません。
…が、しかし。
これをもし見つけ手を貸すものが出た場合は…』
『…毛利か。』
『はい。奴が武器や知恵を授けてしまえば面倒なことになります。』
『その前に、叩きに行くか。』
『…しかし、現在の安土は我らのみ。城守を除いて、西への遠征には…兵力が足りませぬ。』
『呼び戻すのが早まったようだな。』
『家康と政宗を呼び戻す。
あやつらも含め策を練る。光秀、引き続き西の同行を探れ。三成は、安土の兵や武具、兵糧の確認。
秀吉は、先日話に出た堺の武器商の視察を手配しろ。』
『堺に視察、ですか?』
『戦の仕方も新しい武具で変わっていく。兵をなるたけ失わず勝つやり方を知らねばならん。
家康、政宗が到着に合わせ奴等に城守を任せ、視察に行く。』
『『『御意。』』』
『…して、御館様。を視察に同行させるのですか?』
『武具の視察だ。それよりも政宗や家康といた方が愉しかろう。』
『わかりました。』
信長の膝で寝息をたて穏やかに眠るの髪をすく。
最愛の姫を愛でる優しい眼差しは、一呼吸置くと魔王の瞳に変わるのであった。
また、戦か…
うっすらと瞼を持ち上げ、すぐに閉じる。
は、光秀の報告や信長の話を一通り聞き終わると、寝息に混じったため息をついた。
そして、祝言が終わってから考えては答えの見えないある思いと周りのの言葉を思い出した。
※
『お二人の御世継ぎが楽しみでございますな。』
『織田の御世継ぎか御生まれになれば、益々の繁栄は間違いなしですな。』
『奥方の勤めは、立派な御世継ぎを御産みになることにございます。』
『戦がまた始まる前に』
『ぜひに』
『是非とも』
『珠のように輝く御世継ぎを。』
『織田の血を残してくださいませ。』
【世継ぎ】
この言葉は、少しずつを縛り狂わせていった。