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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第10章 舞散る花びら


「本当は誰よりも暖かくて優しいの。でも、この世がその優しい部分に蓋をして、強く恐ろしいものにさせてしまった。本当は、優しくて、誰よりもみんなの事を考えてるんだ。」

『暖かくて優しい、か。』

『俺達には見えないあの人の奥底が、には見えてるんですかね。』

「…なんかさ。
改めて考えると、安土のみんなは私の生まれた世では偉人ばかりだから、私、すごい人と結婚して、すごい人に守られてるんだね。」

『俺達がどうかはわからないけど…。すごい人の奥方なのは認めるぞ。』

『わかってないのは、あんただけ。』

「そっか、ふふふ。」

『…さ、お迎え行くか!』

『案外早く着くかもしれないし。』

「うん、じゃあ着替えてくる!」

『城門に来いよ。』

「はーい!」

パタパタと広間から自室に戻る背中を二人は優しく見守っていた。

『元気になって良かった。』

『あぁ、あいつが笑ってなきゃ俺達は戦う意味ないですから。』

政宗と家康は互いに視線を合わせると、丘に向かう準備を始めた。







「早く着いたかな?」

家康と政宗の愛馬は丘から降りた所の川縁に繋がれ、水を飲んでいた。

『あんまり遠くに行くなよ?…って、家康機嫌治せって。』

丘に向かう道中、どちらがを乗せるかくじ引きをした結果、政宗が勝ったのだった。

『はぁ。帰りは信長様で、最後の機会だったのに。』

「家康、こっちに薬草あるよー!」

『…あんた、きれいな着物着てるんだから薬草何て探すんじゃないよ。』

『俺が先を見ておくから、行ってこい。』

『はい、頼みます。』

『あぁ。…ん?なんだ?』

『え?』

『いや、なんか気配しねぇか?』

『気配、? 佐助ですか?』

『いや、いい気配じゃねぇな。』

『…。…そう言われると確かに。』

二人は周りを見回した。
ざわざわと風に揺られた木々と花が揺れる。

『動物、でしょうか。』

『用心に越したことはねぇ。あいつは天下人の奥方だ。』

『そうですね。 ねぇ、!こっち戻って!
はぁ、どこまで行ってるの?』

家康は、のいる花畑へ向かっていった。






『奥方と武将か。やはり信長が来るようだな。』

そう囁いた黒い影が
三人から離れた丘の近くの林で、動いた。













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