第10章 舞散る花びら
「咲、この小袖じゃ派手かなぁ?」
が広げたのは、白から深紅にグラデーションがかかる色合いに小花が散らされた小袖であった。
『少し派手な方が遠目からもわかるのではないでしょうか?』
「そうだよね! この位いいよね!」
『はい。あっという間でしたね。様の体調も落ち着かれて良かったです。』
「うん、家康の薬茶を毎日飲んでたからかなぁ?」
『それもありますが、きっとお二人と過ごされた時間もあったからなのではないですか?』
「そうだね。私のためじゃなく信長様の召集で来たのに、かまってもらって、ありがたいよね。
お礼言わなきゃ。」
(礼など望んでいないでしょうに。)
咲は、小袖に合う髪飾りを選ぶの姿に、頬を和ませた。
賑やかな城に戻る時間も刻々と近づいている。
『丘に向かうのは、昼げを召し上がってからですか?』
「うん。政宗が、ご飯食べてから行くって。」
『では、そろそろお支度の頃合いですね。』
「もう、そんな時間?」
『髪結うのではないですか?』
「あ、うん。」
『様は髪結いも丁寧にご自身でなさいますから、そろそろなさってはいかがですか?』
「そうだね。余裕もあるし、少し凝ったやつにしようかな。」
二人は顔を見合わせ笑い合った。
襖から覗く陽射しが久々に愛するものに会えるという喜びを表しているようだった。
※
『、ゆっくり食えよ。』
「うん。」
『ほんと、あんたって単純。
信長様と会えることが嬉しいってよくわかる。』
「だって…」
『俺達と一緒にいた間も楽しかっただろ?』
「それは勿論だよ! 二人が来てくれて楽しい時間を作ってくれたから体調も良くなったんだよ。
忙しいのに、家康は薬茶や診察してくれて、政宗はご飯作ってくれて。
ありがとう、本当に。」
『やりたくてやってるんだから、礼なんていらない。』
『旨そうに食べるお前の姿が何よりも褒美だ。』
「信長様が帰ってきても、まだ安土にいるの?」
『あぁ、これから先は西の制圧に向けて動き出すだろうからな。』
「戦かぁ。」
『すぐには攻め入らないでしょ。まずは、知恵比べ、言葉の戦、だね。』