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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第7章 俺とあいつと虎と鹿


家康と背中合わせにして、書簡整理を始める。
なんだ、これ?

『『はぁ。』』

ため息が揃って振り返る。

「二人してなにやってるの?」

『見てわかんない?仕事。』

『不本意ながらな。』

「じゃあ、私は邪魔しないように、ここにいるね。」

が庭に敷いた御座に腰かけた。
照月が膝の上に乗り、わさびが首筋に頭をつける。

『あとで、あいつらと同じことねだってみるか。』

『今なら、怒られないですしね。』

『仕事、早く終わらせようぜ。』

『言われなくても。』

笑って下がっていく咲を横目に、俺達二人は書簡整理や文をしたためた。





『一段落、だな。』

『えぇ。まさか政宗さんと背中合わせに政務するとは思いませんでしたよ。』

『さてと、姫は…。  おい、おい。あれ…』

『…無防備すぎでしょ。』

庭に敷いた御座の上は桃源郷のようだった。

丸まって寝る照月に寄り掛かりながら寝る。
その側で囲うように眠るわさび。
少しだけ着物がはだけて見える、白い肌が真っ昼間から厭らしくて、俺は空を見上げた。

ファサッ

家康が羽織をかけた。

『俺と政宗さんの役得、ですね。』

『あぁ。』

俺は、空いてる御座に寝転がる。

『家康も寝てみろ、気持ちいいぞ。』

『なんで、俺も?』

って、そんなこと言いながら寝るんだろ?
ほんと、天の邪鬼だな。
家康がごろんと寝る。

「う、んっ…。あれ、仕事終わったの?」

『あ、悪い。起こした?』

『一段落ついたからな。俺達もと昼寝だ。』

「気持ちいいね。」

『…ねぇ、いい?』

「え?何が?…って家康!」

おい、何、膝枕で寝てんだよ。
突然、素直になりすぎだぞ!

『じゃあ、こっちは俺のだな。』

「起こられちゃうよ?」

『誰にだよ?』

「…、咲に。」

『怒んないでしょ。政宗さんが、何があっても目を瞑れ、みたいなこと話してたから。』

『見てたのか。』

『見えたんです。』

「ふふっ、しょうがないなぁ。特別だよ?」

そう言うと、は同時に俺達二人の頭を撫で始めた。
風が吹く度に、さわさわと葉が揺れる音がする。
ふんわり沈香との甘い匂いが混ざって香って心地いい。

なんだよ、信長様はこれを独り占めしてたんだな。

ずりぃ。







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