第7章 俺とあいつと虎と鹿
『内緒だ。男同士の、な。家康。』
『はい。』
家康、お前。そんなに優しく笑うようになったんだな。
それだけ、強くもなったんだろう?
『それ、なんだ?』
「毬みたいなのを端切れで作ったの。照月のおもちゃに。」
そう言うとは、ころりと照月の前に転がした。飛び付くように遊び始める照月。わさびも気になってついていく。
『様、お茶になさいませ。』
咲が、茶と茶菓子を持ってきた。城下で最近流行ってる練りきりか。
「あ、うん。咲、ありがと。」
は迷いなく、俺と家康の間に腰かけた。
「このお菓子、美味しいね。枇杷かな?」
『あぁ、旬だからな。』
「一緒に作る甘味もね、枇杷を使いたいの。」
『どんなやつだ?』
「そば粉と白玉粉で焼きもち?を作ってね。
枇杷を甘く煮て、餡といっしょに挟めるの。」
『へぇ、あんた作れるの?』
「食べたことはある!」
『『は?』』
「政宗に、話せばどうにかなるでしょ?」
『ふっ、分かりやすく言えばな。』
「上手くできたら、帰ってきた四人に作ってあげるんだ。」
『視察の帰り道、上手くいけばあの丘の辺りを通るんじゃないですか?』
『そうだな、早めに文を出して落ち合うか。』
「じゃあ、皆でまた宴が出来るね!
…あ、わさび。照月も、そっちはダメだよ!」
蝶を追いかけ始めワサビは、庭の奥に入っていく。
照月もそれを追いかけて、が後を追う。
『様、そちらは蛇もいます!』
弥七と吉之助が跡を追う。
『お転婆姫め。』
『咲、あんたも大変だね。』
『最近は、重臣の方も城に多く…。ご自身でも気を付けていらっしゃるようです。』
『秀吉も煩いからな。』
『だから時々連れ出すんでしょ?』
『信長様は、私にだけは教えてくださいますので、城門に、お連れするんです。逢瀬からお帰りになられた様のすっきりとした表情に、最近は秀吉様もあまり叱らなくなりました。』
『みんな甘いんだから。』
『…ところで、政宗様。家康様。お側に家臣の方が文机と一緒にお待ちです。』
『『え?』』
これを逃さないって位に張り切った俺と家康の家臣が、国からの書簡やら書類をもって笑っている。
仕方ねぇな。って立ち上がると、縁側に即席の政務室ができた。