第7章 俺とあいつと虎と鹿
『おい、来たぞぉ。』
丘に花摘に行った翌日。
俺は、照月を御殿から城へ連れてきた。
家康も、ワサビを連れて歩いてきていて、途中で合流した。
…笑えた。
俺は、小虎だからな。まぁ、絵になる。
でも、あいつは鹿だからな…
城下を馬じゃなく鹿が歩いてるって、そりゃ町人達も驚くよな。
『はぁ、面倒。恥ずかしい事この上無い。』
なんて言ってるけど、の笑顔のためなんだろ?
城に入ると、俺達は広間に面した庭に通された。
呉座が敷かれていて、ざるに盛られたくず野菜と、干し肉が準備されていた。
『いいぞ、好きにしてろ。わさび、喰ったら駄目だからな。』
『わさび、あんまり荒らしちゃダメだからね。』
「いらっしゃい!」
の声が聞こえた。
ピク!
二匹の耳が動いた。
おいおい、すげえな。
「照月、わさび!元気だった?
政宗、家康。連れてきてくれてありがとう!」
『おう。お安いご用さ。』
『なに、お茶?』
「あ、うん。ほら、みんなで飲もう?…って、わぁ!」
そりゃ、飛び付くよな。
あいつら二匹だって、が好きなんだから。
家康が間一髪、茶ののった盆を受け取り、俺がの背を支えた。
『わさびも照月も手加減しねぇな。』
『怪我しないでよね。』
「…気をつける。」
握り飯を食った縁側に腰掛けて茶を飲む。
家康も、俺も、こんなにゆっくり茶を飲んだのは何時振りだろうか。
「おいで、おやつあるよ。」
が二匹を呼ぶ。
御座にあったくず野菜と干し肉を交互に与える。
「ほら、照月、ゆっくり!」
『…飼い主に似るんですかね。』
どういう事だよ?
『欲しいものは欲しいって動いて何が悪いんだ?』
『ふっ、そうですね。…羨ましいですよ。』
『わさびだって、お前にそっくりだ。』
『どこがですか?』
『自然に側にいて、優しく守ってるだろ。…でも、天の邪鬼じゃねぇな。』
『あの位、素直に本能のまま生きれたら、楽なんでしょうね。』
『そうしたら、上手くいけば物に出来たかも知れねぇぞ? 』
『本能で生きる、あんたもでしょうが。』
『まぁな。』
『…俺は、あの人みたいな包容力、持ち合わせてないですから。』
『ふっ、…俺もだ。』
「何二人で話してるの?」