第6章 奇妙なお留守番
『それじゃあ、いつもと変わらねぇじゃねぇか。』
「二人がいたら、普通が楽しいから。」
『あっそ。』
そう。こういう子だった。
我が儘を言わない、普段通りの中に楽しみを見つけるのが上手かった。
『ふぅ。じゃあ、陽が高いうちに行きましょうか。』
『そうだな。、どっちに乗る?』
「え?」
『俺と家康。どっちの馬にする?』
『どっちでもいいですよ。』
『じゃあ、行きは俺だな。』
『政宗さん、早駆けはやめてくださいね!』
『わかってる。』
縁側から俺と政宗さんが立ち上がり、に手をさしのべる。
ふふっ、と笑うと同時に手を繋いだ。
それから、馬を走らせて丘へ行った。
「風が気持ちいいね!」
の髪が風に揺られてふわふわなびいている。
『花を摘むんでしょ。』
「うん。」
『生けるの?』
「うーん。ドライフラワーにして咲に渡すの。」
『どら?』
「あ、花をちょっと長持ちさせて…」
『咲に渡すんだ?』
「いつも助けてくれるから。」
『そう。喜ぶんじゃない?』
は、色とりどりの野花を摘む。
ピィー!
どこからか、鳥の鳴き声がした。
鷹?
…まさか、ね。
『羽黒ー!』
が空に向かって叫ぶと、信長様の鷹は弧を描いて飛んでから、の側を飛び始めた。
『はっ、あいつもなついてんのか。』
『信長様しかなつかないんじゃないんですか?』
「久しぶりだね、羽黒。元気だった?」
羽黒は、ピィピィ鳴きながらの回りを飛んでいた。
『あんたと羽黒、仲いいんだね。』
「うん。たまに、信長様とここに来て羽黒と遊んだりするんだ。」
『二人でか?』
「うん。祝言が終わって少し経った日だったかなぁ。突然、行くぞっ!って。」
『想像出来るな。』
「途中の茶屋でお団子とお茶を買って、二人で食べて羽黒と遊んだの。」
『へぇ。信長様もやるなぁ。』
「うん、楽しかった。…でもね。信長様、秀吉さんに黙ってきてたみたいで。」
『うわっ、それ不味いでしょ。』
「城門に、秀吉さんが立ってて。」
『想像出来るな。』
「すごい怒られたの。でも、なんだか癖になっちゃって。それからも何度か隠れて二人で来てたんだ。
怒られちゃうけどね。」