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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第6章 奇妙なお留守番 


なんだかんだ、仲いいんだね。あんたたち二人。

「この丘は、沢山思い出が詰まってるの。
皆で鷹狩や宴をしたり、謙信様たちが来てくれたり。

この丘で泣いたこともあったけど… 大好きなんだ。」

『そういえば、冷えや肌荒れに効くお茶、まだある?』

「あ、もうない!」

『じゃあ、薬草も摘んでいこう。』

「うん。」

『羽黒とは、なにして遊ぶんだ?』

「えーっと、これ!」

『木の棒?』

「うん。政宗、羽黒に見せてから投げてみて。」

『あぁ。』

ヒュッ

「行け、羽黒!」

ピィー

政宗さんが投げた木の棒を、羽黒は優雅に羽ばたいて咥えてきた。

『すごいな。』

「信長様と教えたの。」

『付け入る隙はないってことだな。』

「え?」

『幸せそうで良かったよ。』

「政宗…」

『さ、俺達も団子食うか。』

「うん!」


団子を食べてからは、薬草摘みをして、は花を摘んだ。
政宗さんは、虫を見つけてはに見せて、それには逃げ惑い、俺の背中に隠れるの繰り返し。
無邪気な笑顔が眩しくて、陽が傾くまで遊んだ。

『帰るか。』

『そうですね。』

「ねぇ、政宗。家康。」

『なんだ?』

『なに?』

「ありがと。こんなに笑ったの、久しぶり。」

…だろうね。
これが、俺の知ってる大好きなあんた、だ。

『まだまだ、もっと笑わせてやるよ!』

『明日はワサビと照月と遊ぶんでしょ?』

「うん。」

『さ、帰りは俺の馬だったよね。』

『そうだったか?』

『そうですよ!』

全く、政宗さんは油断も隙もない。

『ほら、帰るよ。』


あんたは笑ってなきゃ駄目なんだ。
信長様が、あんたは太陽で俺達は向日葵だって話してた。
あんたの光が迷わず道を照らして、繋いでくれる。
だから、みんな迷わない。

きっと色々あるだろうけどさ。

笑っててよ。

それを護れるなら、命だって惜しくない。

大好きなんだ。
信長様の正室でも。この想いは変わらない。


夕陽の照らす帰り道。
ふわりとなびくの髪が、気持ち良くて。

これからもずっと
こんな普通幸せが続くって

俺は、疑わなかったんだ。




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