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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第6章 奇妙なお留守番 


を追いかけるように、俺達も歩き出す。

『なぁ、家康。』

『なんですか?』

『この数日くらいはよ、をただの姫に戻してやりてぇ。手、貸せよ。』

『そうですね。織田信長の正室って重責を外してやりましょうか。』

『たくさん笑わせて、うまいもの食わせてやろう。
あ、三成がな。この数日に星が流れるって話してたぞ?』

『じゃあ、皆で見ましょうか。』

『ふっ。皆で、か。』

『えぇ、皆で。』

「政宗、家康、どうしたの?」

『いや、なんでもないぞ。握り飯作るな!』

『俺は馬を準備してきます。』


きっと、こうやって甘やかす事くらい、信長様はわかってる。
だから、存分に甘やかす。

少しだけ、柔らかくて甘くて重い【正室】の駕籠から出してあげる。

俺は自然に緩んだ口元を手で隠して、馬屋に向かった。



城に戻ると、政宗さんが咲に何か話していた。
たぶん、この数日は【正室らしく】とか何とかを求めるな。何て言ってるんだろう。
咲も笑って頷いていた。

なんて幸せな姫なんだろう。
どこ探したって、こんなに愛される姫はいない。


『せっかくだから、ここで食うか!』

政宗さんが昼を食べる場所にしたのは、広間に面した縁側だった。

「ここ? 怒られちゃうよ?」

『誰にだよ?』

『居ないでしょ?』

「あ、そっか。ふふふっ。」

縁側にを挟んで三人で座る。

『は梅干しと鮭、どっちだ?』

「鮭!」

『家康は?』

『…梅』

「なんか、悪いことしてるみたい。」

『楽しいだろ?』

「うん!」

、姫はそんなに口開けて食べないよ。
…まぁ、あんたらしいけど。

『今日は、これから丘に花を摘みに行く。明日はどうする?』

「なんでもいいの?」

『何がやりたいか言ってみて。』

「うーん。じゃあ、照月とワサビと遊びたい!」

『じゃあ、明日はここに連れてくる。家康もいいな?』

『はぁ。』

面倒。照月は小虎だからいいけど。
ワサビは、鹿だから…

鹿を連れて歩くって…

恥ずかしい。
仕方ないけど。

『…あとは?』

「甘味を作りたい! この前の政宗の茶菓子で閃いたのがあるの。」

『へぇ、じゃあ作ろう。』

「あとは、二人が政務してる近くで針仕事したい。」







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